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[コメント] 白線秘密地帯(1958/日)

60分弱の欠落版を見る。シーンの明らかな欠落も見て取れるが、カットレベルでも、かなり途中で切れている(カット尻の欠損等)。冒頭クレジットバックのBGMが途切れ途切れなのも、欠落だろうか?不思議な音楽になっている。面白いけど。
ゑぎ

 シーンの欠落で顕著なのは、中盤で登場する「ころがしの政」という役名の荒川さつきが、2人の娘をかどわかすシーケンスだ。1つ目は、神田橋女子職安から出て来た葉山由紀子に、アイスクリームを奢って手なづける場面の後、葉山はいきなり、都ドライブクラブという売春組織で機嫌よく働いてる。2つ目は、不動産屋の前で、瀬戸麗子を物色している荒川のカットの後、瀬戸は唐突に新宿の暴力バーで働いており、バックルームで天知茂に手籠めにされる、といった不自然な繋ぎの部分だ。2人の女優の見せ場の欠落が残念ということはあるが、正直云って、プロット展開の把握という意味では、大きな問題はない。

 地帯(ライン)シリーズ第一作。欠落版を見ても、けっこう面白いし、良く出来ていると感じる部分が多々ある。シリーズ化されたことがうなずける。まずは撮影で云うと、効果的な仰角構図の多用を指摘したい。主人公の刑事・宇津井健の殺人現場での登場カットは仰角。あるいは、殺人犯の九重京司が、大友純菅原文太(若い!)によって人気のない河原で消されるが。こゝも凄い仰角と斜め構図だ。上にも書いた、天知茂が瀬戸麗子をレイプする場面も仰角カットなのだ。また、ラストのクライマックスは、当時の豊洲石炭埠頭を舞台にした炭の山での銃撃と殴り合いだが、こゝでは、クレーン俯瞰が何度か使われる。ラストカットもクレーン上昇移動のカットだ。

 さて、もう一つ重要なポイントを書いておくべきだろう。それはヒロインと云っていいと思うが、三原葉子の存在だ。本作でも、とても明るく、屈託のない性格付けで、陰惨な事件に対比するように描かれている。冒頭の上野のトルコ風呂のシーンから嬢として登場し、随所で刑事の宇津井とも、悪役側の荒川さつきとも絡むのだ。署に連行され、尋問を受けるシーンで、くるっと回転する所作をカッティング・イン・アクションで繋ぐ演出があるのだが、こゝはとても可愛い。あるいは、競馬場の柱の陰で、スカートをまくり上げ、ストッキングを直すサービスカットもたまりません。

#その他の配役等を備忘で記述しておきます。

 上野のトルコ風呂。三原のライバルの嬢は筑紫あけみ。殺されるのは吉田昌代。トルコ風呂の支配人は若月輝夫

 殺された吉田が前に勤めていた店(洲崎の赤玉)の店主で近衛敏明が登場。

 刑事役は宇津井の他、中村彰鳥羽陽之助

 ころがしの政の巣は三河島。貧民街イメージが出て来るが。当時の三河島か?都ドライブクラブは月島にある。葉山由紀子がオジサンと一緒にドライブで行く先は多摩川べりの松林。『秋立ちぬ』に出てきた場所(カブトムシを採りに行った場所)と同じに見える。

(評価:★3)

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