[コメント] 女優霊(1996/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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Jホラーブームの中で頭角を現し、国際的な評価を得た監督は何人もいるが、最大にブレイクしたのは『リング』だろう。これによって国際的に大きくJホラーは認知されるようになったが、それ以前にその手法で作られた作品があった。まさに『リング』を作った中田監督のデビュー作として。
劇中の村井を思わせる経緯をたどり、低予算ホラー作品を任された中田秀夫は、ここに新しい手法を取り入れた。
これまでもホラー作品は作られてきたが、基本は大体同じ。暗がりの中でビックリさせること、グロテスクなモンスター、エキセントリックなキャラというのが中心だった。明らかにこれは海外の作品を模倣して作られたもので、キャラの顔が日本人に変わって、いかにも金をかけてない作りでしかなかった。
そこに中田監督は重要なファクターを取り入れた。
それが日本古来からある怪談の要素である。
怪談なんて古くさく、それこそ作り物ではないかと、これまでお化け屋敷要員でしかなかったのだが、監督は怪談の持つ雰囲気に注目した。
そこで「霊」に注目したのだ。これまで描かれた幽霊はモンスターでは無いために直接殺人を犯すキャラとは言えず、ただそこにいるだけの雰囲気要員に過ぎなかった。
しかし、その雰囲気だけで人を恐怖で殺せるのなら?
これは卓越した考えである。これまでホラー映画でも人を殺すのは物理的打撃によるものとばかり考えられてきたし、それが基本だった。だが精神的恐怖だけで人を殺せるなら?
それはこれまでにない全く新しい殺人方法だった。そしてこれを編み出したことから中田監督は世界的なホラーを手にすることとなり、Jホラーという新しいジャンルを作り出したのだ。
その最初の作品が本作となる。『リング』以前のJホラーというか、本作を以てJホラーが誕生したというか。いずれにせよ記念すべき作品である。
幸運にも泡沫映画に過ぎないはずの本作が好事家によって見いだされたことによって、中田監督は『リング』という大作監督となれたのだ。良い作品はちゃんと見いだされるということをよく示した実例とも言える。
ただ、それは分かっているけど、私がこれを観た時期が遅すぎたのがちょっと問題。
他のJホラー作品を散々観た後で本作を観ると、ちょっときつい。雰囲気に頼りすぎるのと、キャラの演技の硬さがどうにも目に付きすぎてしまい、単純なくせに物語も分かりづらい。怖さも足りない。
出来れば本作はすれてしまう前に観ておくべきだったか。
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