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[コメント] 美しき結婚(1982/仏)

いやあ面白い!これはロメールの中でも一二を争う出来かも知れない(なんて思いにさせる作品が何本もあるところがロメールの凄さだが)。プロット的には全編、主人公(ヒロイン)のベアトリス・ロマン−サビーヌが出ずっぱりの女優映画だ。
ゑぎ

 しかし、彼女の乗る自動車(ルノー)や列車(パリとル・マン間を行き来する)がとても効果的に使われており、とりわけ列車の映画だと云いたくなる作品だ。プロローグ及びエピローグも列車内だが、終盤になって、短いカット割りで車窓や窓外を見るヒロインのショットが反復されるリズム感が素晴らしい。

 また、これはヒロインのサビーヌが「私は結婚する」と云いまくる映画。備忘を兼ねて、云った相手を時系列に記載しておくと、次の5人になる。まずは冒頭近く、サビーヌとのベッドシーンもある妻子持ちのシモン−フェオドール・アトキン(彼との別れ話の後に云う)。次に親友のクラリス−『海辺のポーリーヌ』のアリエル・ドンバール。3人目はサビーヌが働く骨董品店のマダムに(喧嘩して店を辞める際)。4人目は、元カレ(これも妻子持ち)のクロード−『緑の光線』のヴァンサン・ゴーティエへ。最後にサビーヌの母親だ。この母親との場面で極めてゆったりとした寄りのショットがあるのだが、これはドリーだと見た。ちなみに、全編でもう一カ所だけ人物に寄るショットがある。それは親友クラリスの従兄エドモン−アンドレ・デュソリエと2人きりになってソファに座った場面だが、こゝはドリーにズームも加わったショットじゃないかと思った。こゝも実に情感たっぷりの良いショットだ。

 良い画面造型ということだと、いつもながらだが屋内シーンの撮影・照明は、全編美しいと思う。中でも、クラリス−ボンバールの弟二コラ−パスカル・グレゴリー(『木と市長と文化会館/または七つの偶然』ではボンバールの恋人役)の結婚披露宴で、エドモンが帰った後、一人になったサビーヌが窓から外を見るショット。あるいは、サビーヌがエドモンと店(骨董品店)の顧客に会いに行った後に入るレストランの場面なんて、その美麗さに感嘆するレベルだ。2人のバストショットの切り返しも美しい。屋外シーンならば、何度か出て来るサビーヌとクラリスが2人して舗道を歩くショットもすこぶるいい。

 あと、クラリス役のドンバールは『海辺のポーリーヌ』よりも2年前の頃で、流石に若くて綺麗。サビーヌ−ベアトリス・ロマンもチャーミングだが、やっぱりドンバールのいかにもモデルタイプの美しさとは対照的だろう。さらに、サビーヌの妹役でソフィー・ルノワール(『友だちの恋人』では主人公の友だちレア役)が出ている。サビーヌの誕生パーティのシーンで、来訪者は、ほとんど妹の友だちばかりで、みんな妹が目当てだとサビーヌがすねる、この扱いも面白い。

(評価:★4)

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