[コメント] 友だちの恋人(1987/仏)
勿論、そんなことは無かったのだけれど、しかし、ロメールのイヂワル度は私なんかのずっと上を行っていて、しかも、それをプロット展開や科白で示すのではなく、登場人物の衣裳の色で示すのだ。すなわち4人の男女の衣裳、青と緑の組み合わせの妙。この人たち、今後も絶対にいろいろあるだろうなぁと思わせる。
本作の舞台はセルジー=ポントワーズ。近作だとギヨーム・ブラックの『7月の物語』『宝島』、セリーヌ・シアマ『秘密の森の、その向こう』なんかでも出てきた、湖と森のあるレジャー施設が本作でも度々ロケ地として使われて、ロメールらしい開放的なヴァカンス感覚を醸成する。ただし主人公のブランシェは市役所の職員なので、セルジー側の街中の場面、道を歩くシーン、カフェやレストランで食事するシーンなども多くある。これらのシーンをロメール作品の中でもとりわけキビキビとしたリズムで、短いショットを多用して繋ぐ映画だと思う。
例えば、ほとんどのカットが人物のアクションの途中から始まる。歩く人物のカットなら、最初から画面に歩く人が映っているといった意味だが、さらにカット尻も短い。また、複数人物の会話シーンでは、端正な固定の切り返し主体で繋ぐのだが、要所でゆったりとしたズームイン/アウトも使われてアクセントになる。これらは、ほとんどドリー移動と見紛うようなズームであり、ホン・サンスみたいなヘンテコ・ズームとは全く違う。
一つ例をあげると、前半、ブランシェと友人のレアとレアの恋人−ファビアンの3人で、初めて食事をするシーンでは、最初はレアのバストショットと、ブランシェ及びファビアンのツーショットとで切り返している。次にレアがファビアンの椅子の後ろに来て、今度はゆっくりファビアンとレアのツーショットにズームインする。この例のカメラの動きは、3人の関係の危うさをよく象徴するものだろう。
あと、上で多くのショットがアクション途中から始まると書いたが、終盤近く、空(から)のオフィスが映って電話の音がし、ブランシェがフレームインして電話に出る(レアからの電話だった)、次に空のアパートの自室が映って呼び鈴が鳴り、ブランシェがフレームインしてドアを開けに行くとレアが入って来る、といった音の演出を絡めたフレームイン2連打なんかもやっていて、それでいて、とても速いプロット運びを実現している。このあたりも実に上手いなぁと思う。
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