[コメント] 男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日(1988/日)
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何を隠そう、私は日本生まれの日本人だ(←誰にも分かる)。『男はつらいよ』が早稲田で撮影されてたとは知らなかった。寅は別として、おばちゃんすら校歌の出だし(♪都の西北〜)を知ってんだ。寅さんの甥(満男)が目指す学校として、なんとなく、早稲田バンカラは相応しい気がする。なんとなくだけど。
『サラダ記念日』は知ってる。俵万智は、一文を出て神奈川の高校教師をした。
▼万智ちゃんを 先生と呼ぶ 子らがいて 神奈川県立橋本高校
当時の高校生からすると、大人の、社会人の方が書いた歌集との印象である。
▼結婚を しようだなんて 缶チューハイ 2本で言ってしまっていいの
▼この味が いいねと君が 言ったから 7月6日はサラダ記念日
したがって、本作でのように学生気分の歌集とされるのにはやや違和感がある。だから少し変えたのか。
▼寅さんが 「この味いいね」と言ったから 師走6日はサラダ記念日
他にもあった違和感。博(前田吟)ってこんな教育パパだったっけ。子どもの自主性を重んじる、理解ある大人って感じだった気が。さくら(倍賞千恵子)の台詞も非道い。「伯父さんは世間に否定されたのよ」。別に犯罪者じゃないんだし。まあ、この手のシビアさは、本シリーズでたまに顔を現す。学問をするのは、筋道立てて物事を考えられるようになるため、との寅理論にも反論を言いたくなる(←大学出ても、こんなもん)。それは入り口論ではないか、とか。まあこれも、第16作・葛飾立志篇(1975)で唐突に学問を志した寅の心境の、解答編にはなってるか。
話としては、まとまりもあり、エピソードのバランスも良かったと思う。相変わらず、マドンナ(三田佳子)から好意を示され、寅が急遽木偶の坊化する。これもまあ、この女医さんに自分のような男は相応しくないと判断してのことだと、見られなくもない。
19/8/8記
忘れた頃にやって来る 天災・短歌シリーズ第?弾
◆ ◆ ◆
三田寛子は国文学専攻と言うので、一文(第一文学部)だと思います。でもロケ地はほぼ本部キャンパスでしたね、戸山の文キャンではなく。ま、その辺は別にいいんですが、寅の潜り込んだ一文の(?)講義が産業革命論だったのにちょっと驚きました。アーノルド・トインビー(19世紀の経済史学者。20世紀に活躍した歴史学者とは別)は「産業革命(industrial revolution)」という用語を最初に世に広めた人ですが、確かに当時から、経済史の記述にrevolutionの語は相応しくないとか、何かと批判はあったとされているんですよね。まあ、初歩的なと言うか、入り口論なので、後期の授業も押し進んだ12月初頭にこんなとこ講義してるなんて、どんな流れなのかと思わないではないですが。当時の日本はバブル経済最盛期。まだ日本以外のアジア諸地域で工業化(industrialization)に成功したところはほぼないと言われていた時代です。科学的社会主義に同情的と言われる演出家の心情に、何かが訴えたのだろうかと考えさせられました。
21/1/10追記
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