[コメント] シクロ(1995/仏=香港=ベトナム)
あの、ヤクザのおかみさんの子どもが障害を背負っていると見るなり、戦争の後遺症を想像してしまう。あの若いヤクザの鼻血も気になってしまう。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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トニー・レオンは、いつもよく動いて表情たっぷりな目を使わないで、虚ろな若者をとってもよく表現していた。空っぽな自分から不意に流れ出てくる赤い血を若者はどんな想いで見つめていたのだろう。自分の矛盾をどうすることも出来ず、女たちを稼がせていた家を自分とともに燃やしてしまう若いヤクザの哀しみ。
輪タク同士が客を取り合って争う姿、女性がヘンタイ金持ちのおもちゃにされる姿、割のいい仕事を求めて、ヤクザの世界へずぶずぶ入っていく、ひょっとしたら戦争があったことさえ知らない若い世代。
社会主義的システムを切り崩していった代償に、じわじわと病に蝕まれていく祖国を、監督は無力感にとらわれながら、寂しい気持ちで見つめている。
結局自分が何をしたいのか分からない自転車こぎの少年は、ラリっているまにかたぎに戻るチャンスを手に入れることが出来た。まるで夢から覚めるように。アンタには、そんなペースが似合っているわねと思わず微笑んでしまう。
しゃれたビルとテニスコートを囲んだフェンスの向こう側に広がる、見慣れたホコリっぽい町並みを写すラストシーンに、家族を乗せて走ってくるシクロが印象的。
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