[コメント] 影の車(1970/日)
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野村芳太郎の清張ものを本作で全部観たことになったが、これが一番面白かった。加藤剛は途中で逃げても良かったのだ、毒饅頭の辺りで。岩下志麻に懇願されてふらふら戻っちゃうのは、これはもう自己懲罰なのだろう。中途でおじさんの滝田裕介殺害を断片で示すショットが、ちょうど加減のいい説明になっている。加藤が子供の首を締めてしまう(逃げりゃいいのに)のはその子に自分を見たからろう。最後に問わず語りに過去の犯行を語ってしまうのも、ずっと昔からそうしたくて堪らなかったのだ、と思う。加藤の鉄面皮が効いている。
少年の犯行か加藤の幻覚か判然としない『回転』系の悪夢めいた描写の積み重ねもいい。ただし、ガス漏れの件(加藤が居眠りしている間に家に閉じ込められる)で少年が玄関の鍵を外から閉める客観ショットは蛇足で、犯行説を採用する論拠になってしまっている。あの山の中腹の一軒家で、庭でボール遊びをするだけなのに、かつ中に大人がいるのに、鍵を閉める必要は全然ない(当時の邦画は扉に施錠しないことが多いから、習慣からしてもおかしいと思う)。少年が薬缶が沸騰しているのに気付かないのも不自然だろう。
加藤の少年時代の子役が大島『少年』(前年の作)の少年に似ているが、影響関係はあっただろうか。岩下が家に持ち帰る保険金27万円は今だと100万円にはなる(固定給1万5千円は安い)。疎んじられる妻の小川真由美が上手い。レリーフ効果は私は上等と思う。タイトルは清張の短編集の題らしいが意味不明。
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