[コメント] アミスタッド(1997/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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スピルバーグ映画の特徴の一つとして、異文化の接触というものがあると思われる。
それは例えば『シンドラーのリスト』ではユダヤ人とドイツ人の、『1941』ではアメリカ人と日本人、『ミュンヘン』ではユダヤ人とアラブ人など。これは何も歴史だけじゃなく、これが拡大すると地球人と異星人との接触として『未知との遭遇』、『E.T.』、『宇宙戦争』と言った具合で作られる。ただ、ここで面白いのは、その多くの作品では、国や星を外側から見ている作品がかなり多いと言う事。敢えて主人公を国の中の人ではなく外国人の方に持っていき、その目から国なり星なりの文化をストレンジャーとして眺めている作品が結構多い。心理学的に言うなら、アメリカ生まれではあってもユダヤ人としてのアイデンティティを強く持つスピルバーグが、アメリカという国で、外国人として生きてきたことが作品に現れているとも見られるだろうが、この人の場合、そういう特殊な感性を持つために、見慣れた光景の中に新鮮な発見を見つけることが出来る人だったのではないだろうか。日常性の中に映画のネタを見いだすことに秀でた人であったわけだ。
そんなスピルバーグがここで題材に取ったのは奴隷制の時代。これは最早日常と化した肌の色の違いが、どのようにしてこの国に根付いたのか。という事を描きたかったからではなかったかと思うが、これもアメリカの中にいる人ではなく、奴隷の目でアメリカを見ているのが特徴。
アメリカは移民の国であり、多くの国々によって、一種の代理戦争のような小規模な争いを繰り返すことで、一つにまとまっていった国である。そんなアメリカでも、つい近年に至るまでなかなか根付かなかったのがユダヤ人問題とアフリカ系住民の問題。かつて『紳士同盟』で描かれたように、陰に日向にユダヤ人問題は登場する。かつてスピルバーグは、だからこそ『シンドラーのリスト』を作ったとも言えるのだが、その同一線上にアフリカ系問題を持っていき、アメリカの側面を描こうとしたのかもしれない。
ただ、その意気は買うが、物語としてどうかというと、ちょっと外し気味だったかな?ユダヤ人問題ほど強く意識していなかったのか、あるいはまとめきれなかったのか。話はちょっと間延び気味だったし、先に制作した『カラー・パープル』同様、カタルシスが足りず、盛り上げきれなかったのがちょっと残念なところだった。
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