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[コメント] 神様のくれた赤ん坊(1979/日)

こういうイモを偏愛するのが邦画ファンのあるべき姿と心得てはいるつもりだがこれではあんまりである。爺婆の慰みものに過ぎないのではないか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







森崎的な悪意も、山田洋次の方法もなく、この末期的な松竹人情喜劇は生のまま放り出されたような具合だ。音楽の辛気臭さが何より末期的で、メジャーとマイナーが5分おきに交錯する様は周期の極端に短い躁鬱病質。映画はここまでクールネスから離れていいものなのだろうか。もっといい映画だった記憶があったのだけど。

桃井かおりの脇筋がどうもイマイチに見える。初恋の散髪屋森本レオに顔剃って貰う件だけは密やかでとてもいいのだけど、城巡りは平凡だし、街娼になってみる件も盛り上がらない。桃井は抜群に上手いが内実が伴わない。子守歌で悪酔いするような泣かせは平凡に過ぎる。

気付きを与えるラストは好感度高いものだが『百万両の壺』類型に留まる。少年は出番少なく、二人が忘れ物したみたいと云うほどの吸引力に欠ける。面白いのは巨人の野球帽が『少年』を想起させることで、これは意図的だろうか、この少年にとって、オーシマ作同様の受難の旅だったのだろうと思わされる。

曾我廼家明蝶嵐寛寿郎の、それぞれのキャリアの終盤に位置する喜劇はいいものであり、一方吉幾三たちは何もできていない。男前の吉行和子とともに任侠の人情を語る終盤もまた邦画の伝統芸で、昔はよかったなあという落とし処なのはよく判る。私的ベストショットは渡瀬恒彦がチャンポン喰らう際に左手で箸握るショットで、ふたりは親子だと簡潔に指摘するのが素晴らしい。こういうクールネスがもっとほしかった。

(評価:★3)

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