[コメント] 快盗ルビィ(1988/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
京橋の国立映画アーカイブまで足を運んで、35年ぶりの再鑑賞。さすが国立映画アーカイブ、36mmフィルムでの上映でした。しかも公開当時同様に『怪盗ジゴマ 音楽篇』を同時上映。
映画鑑賞の前に、和田誠展を見たので知っていたというのもありますが、和田誠自身も言っている通り、彼は「映画評論家」ではなく「映画ファン」なんですよ。特にクラシックハリウッドの。だからこの映画が狙ってるのは、クラシックハリウッド的なロマンチック・コメディなんです。
映画序盤に顕著ですが、頻繁にクレーンでカメラ移動します。確実に「当時の映画」を意識してると思うんです。下の階から上の階へカメラが縦移動するなんて、まるで『裏窓』 で、窓から外が見える構図の小泉さんの部屋はまるで『泥棒成金』。
そもそも小泉さんと真田広之の出会い、アパートの階段の上下で会いますが、これはもう『ティファニーで朝食を』ですよ。お着替えも含めて、小泉さんをオードリー・ヘプバーンに見立ててるんだと思います。
あと、小泉さんの部屋に、ボギーことハンフリー・ボガードの巨大パネルがあるじゃないですか。でも、小泉さんはそれに言及しないんですよね。「ボギー、あんたの時代は良かった」と言うこともなく、悠木千帆のように「ジュリー!」と叫ぶこともない。実はこのボギーに反応するのは真田広之だけなんです。母親の水野久美は気付かないんですよ。マタンゴは分かるのに。極端なことを言うと、ボギーは真田広之にしか見えないも同然。 つまりこれは『ボギー俺も男だ』だと私は思うんです。ということは、この眼鏡といい、真田広之をウディ・アレンに見立てているのではないでしょうか?
つまりやりたかったのは、オードリー・ヘプバーンとウディ・アレンによるヒッチコック的ロマンチック・コメディなのです。
と、和田誠の映画愛を全身全霊で受け止めようとしてますけどね、それほど面白くないんだよなぁ、この映画。
何故なんだろうと考えた時に、キャラクターに奥行きがないんですよ。和田誠のイラストと同じで平面なんだ。写実的な絵を描く人でないことは分かっていますけどね。
「怪盗になる」とワケノワカラナイことを言い張る小泉さんが、まだ若くて可愛くて、ワケノワカラナイことを押し通す力強さがないんです。これがデビュー40周年を越えた今の小泉さんだったら、問答無用の説得力はあると思いますけどね。
(2024.02.03 国立映画アーカイブにて再鑑賞)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。