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[コメント] マイ・プライベート・アイダホ(1991/米)

映画史上最も切ない“I love you...”。(2007.3.25)
HW

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 ・・・というような、どこかで何十回も聞いたような宣伝文句めいた評を敢えてこの映画に用いるのはいくらか訝しがられるかもしれませんが、しかし、ほとんどキアヌ・リーブスの方に顔向けられなくて(対するキアヌの気の毒な動物でも見るような眼差し!)、そんでもって指なんかをもじもじやりながら、挙句に膝を抱えて「・・・もう、いいよ」とか言い出しちゃって、それでも、か細く「好きなんだ」と繰り返すリバー・フェニックスに、何か色んなモンでも感じやがれ、コンチクショウ、と言っておきたい訳です。

 そして、映画史上常に危ないウド・キアー(失礼)。初登場シーンでのリバーとの変な距離感からホテルの部屋での踊りから出る場面出る場面ことごとくイカレています。そんな手付きでバイクを撫で回さないで下さい(リバーのふともももだけど)。そのウド・キアーをサングラス越しに一瞥して、“You like your bike?”とかなんとか適当にあしらい、淡々とスピード違反を切る警官とのやり取り(?)が笑えます。

 喋り出す雑誌の表紙とか、静止画(風)とか、ぶつ切りな場所移動とかも気になるところ。話はぶっちゃっけそんなに面白くないけど、いいですよ、これ。

 ラストシーン、「どこまでも続いている」道の真ん中で突然の眠気に襲われ倒れるマイク(リバー・フェニックス)。夢の中でしか存在しない(そして遂に「夢」のままで終わってしまった)母と共にある故郷(“My Own Private Idaho”)、マイクはそれを思うと、帰る場所のない自分はどこへも行けず何事もなしえない人間かのような「眠気」に襲われてしまうのだ。通りかかったトラックの二人組みが倒れたままのマイクからバッグと靴を盗んでしまうが、次に現れた車から兄(本当は父親)リチャードが降りて来て、マイクを抱き起こし、車で共に道の先へと走り去って行く(ロングショットなので、意図的にか誰なのか判別困難ではあるのですが)。帰る場所のないマイクに帰る場所を与え、大丈夫だと言ってやれるのはやはり(「兄」ではなく「父親」として向き合う)彼なのであろう。結局、帰る場所とは「場所」ではないのだ。掲げられる“Have a nice day(いい一日を)”の字幕。この言葉は、本編においてはもともとスコット(キアヌ・リーブス)が「どちらへおでかけですか?」というメイドの質問に対する答えとして使ったという言い回しだ。親子二人を乗せた車は一体どこへ行くのか? その問いへの答えが“Have a nice day”なのである。リバーの呟く“I love you...”並みに頼りなくって情けなくって愛らしいハッピーエンド。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)movableinferno けにろん[*]

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