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[コメント] 夜叉(1985/日)

本作は健さんファンの方には申し訳ないが、彼が演じる大阪難波=ミナミの夜叉の活躍というカッコいい男の物語ではない。福井県の片田舎(出身の方、すみません)敦賀の漁村に妻と移り住んだ元ヤクザの1漁師の話だ。脚本家中村努が描きたかったものは何だろう?
KEI

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







(ラストシーンまでネタバレです。ご注意を!)

オープニングシーンは、健さん演じる修治の友達の息子が漁村を捨て東京に行くところだ。若い勢いだけで生きて行こうとする青年。ミナミで若い頃、俺もそうだったと振り返る修治。ここからこの物語は始まる。

・・・ミナミから流れてきた女、男にとことんつくす女、蛍子と知り合って、修治は浮気し、彼女の願いを聞いて、もう一度夜叉としてミナミに戻る。

・・・ミナミでの出来事は詳しくは触れないが、あっさりと終る。(というより、あっさりと終らした中村努の上手さが光る)。そしてその後女はミナミに帰ると言う。ついて来てほしかったが、修治は隠れるように目を落としホームの陰で見送りに来ただけだった。

ラストは又、東京に行った青年からの手紙だ。「青春は素晴らしい」と書いている。漁に行く漁船の上で読みながら、海の光の眩しさにそっとサングラスをかける修治・・・で終わる。

「俺・・・金で話つけたことないんや」なんて言っていたミナミの修治は一介の漁師になって、もうガキやないんや、大人になって、カタギになって(海の上だけど)地に足の着いた生活を送ろうと思ったのだろう。

私自身、ヤクザの高倉健はそれほど好きでもないが、この修治は良かった。漁師で生きて行こうと決めた修治は本当の意味でカッコよかったよ。

木村大作降旗康男の仕事はもちろん完成度は高かったが、脚本家中村努の最高作ではないかと思う。

(評価:★5)

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