ビデオ視聴。

聞くところによると、監督はビデオでは観てくれるなと言っていたらしい。なるほど酷い。総天然色CINEMASCOPEの映画であったはずなのが、モノクロかと思われるほどに色彩は減退、おまけに規格はスタンダードサイズに切り詰められてしまっている。作り手としては総天然色CINEMASCOPEの映画として画作りしていたはずで、その分は割り引いて観なくてはならないと思う。

それにしても貫禄十分な力作。片岡千恵蔵の重みのある物腰とドスの利いた野太い声で、得体のしれない虚無を孕んだ机龍之介のキャラクターが独自の生命を宿しているように思われる。原作の長大な筋書きはさすがにすんなりには辿りきれてないような印象はあるが、物語に無理を感じるほどの破綻はない。