[コメント] 殿方ご免遊ばせ(1957/仏)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ブリジット「前の車の男を追っているのよ」/警官「男は追えば逃げる」/ブリジット「彼を愛しているの!」/警官「では、お行きなさい」
◇ ◇ ◇
上質なコメディ、という言葉がまず思い浮かぶ。
登場人物の性格付けや、その人間関係、またそこに潜む微妙な緊張感といった、物語を転がす前提となる要素を、短い時間でテキパキ提示していく要領がすこぶる良い。スポーツカー、大統領官邸、パリの街並み、飛行場、エールフランス機、郊外の大統領別邸、新婚夫妻の新居、外国女王夫妻を載せた汽車、そういったものすべてが、映画という一つの目的のために力わ合わせて見えることが実に気持ち良い。スピード違反の切符を切らずにブリジットを見逃す警察官も、おパリでは警官さえかくも粋である、てなイメージに包まれて見えるから不思議だ。
また、これらを成立させる重要な要因でもある、役者がよく揃っている。ほとんど登場しただけで、どういう役柄を担うことになるのか、瞬時に想像がつくような雰囲気をたたえている。女王役のナディア・グレイが見せる聡明さと高貴さ、王配のシャルル殿下(シャルル・ボワイエ)が見せる気楽さと、遊び人ぽさ。大統領役の役者さんも、その堅物そうな佇まいのうちに、酸いも甘いも噛み分けた苦労人風情をきちんと醸し出している。好色な二枚目を演じるアンリ・ヴィダルのふてぶてしさだけは、大統領の秘書官という役柄からはみ出して見えるが、いまいち大物感に欠けるところが、うまく抑えになっている。
そして、これらのすべてが、ブリジット・バルドーの魅力に結実していると言っても過言ではないだろう。ラストシーンではあのBBが私・だ・け・に目配せをしたのでドキドキしてしまったが、こう思うのは私が男だからしょうがないことだ。だが万人が彼女と秘密を共有したような密やかな楽しみを胸に映画を見終えたのではないだろうか。
80/100(10/09/25記)
※エレガンスじゃないよ、エンガチョだ。シャルル殿下とジェット機でニースに飛んで水遊びをした、と言ってもミシェル(アンリ・ヴィダル)が信じないので、街で学生時代の女友だちと偶然会って一緒に映画を観に行ったという、シャルル殿下に教わった通りの嘘をつくとき、BBは後ろに回した両手の中指と人差し指を交差させていた。かわいいねえ。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。