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[コメント] 王将(1962/日)

演れば演るほど阪妻の影を感じざるを得ないなか三國連太郎は好演、豪勢なセットを慈しむように撮るキャメラが美しい。もう少し日蓮宗が大人しければ、愛してしまいたい映画なんだけど。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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映画は阪妻作のほぼ正確なリメイク。名作のリメイクは当時の東映の企画であるそうだ。途中に遊びがなく三田佳子も固く、名場面のダイジェスト版みたいにコチコチしているが構わない。

草履を編む生業の三吉、関根(平幹二朗)に勝ち越しているのに名人には品位や教養が必要だと云われて身を引いて、お祝いの品に自分の編んだ草履の束を関根に差し出す。このとき三吉の心根には何のイロニーもないのだが、世襲名人制にとっては、これはイロニーなのだ、という処が素晴らしい。品位や教養とは人として何でもないのだ。

団扇太鼓叩きまくる日蓮宗、能勢の妙見山への信仰があられもなく強調されており、海に入って叩くのには参った。淡島千景も過剰だ。阪妻作でも同様だから仕方がないのだろうが、伊藤大輔はなんでここに拘るのだろう。純粋に史実なのか。自らの宗旨だったのか。集客の関係なのか。機会があれば調べてみたい。

25銀の件は将棋の判る人には「次の一手」問題のような演出で、指導の升田幸三作か(三吉は「銀が泣いている」と嘆くが、あれはこの場面ではない)。通天閣が望まれ、汽車の煙だけが舞うセットは阪妻作が再現されている。通天閣の辺りにあんな傾斜地はなく、想像の場所なんだろうか。

いいシーンがたくさんある。親子心中の線路、階段を撥ねて落ちるキセル、庭で落葉燃やす煙、最後に三吉が橋の上で消える汽車の煙。花沢徳衛の被るサファリ帽のような帽子はたまに見るがあれ何なんだろう。ベストショットは淡島のお守りから零れ落ちる王将。抜群の小物遣いで見事に決まった。

(評価:★4)

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