[コメント] ウィッカーマン(1973/英)
映画を見終った人むけのレビューです。
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本作は本国イギリスでもなかなか上映の目処は立たず、公開されてもあっと言う間に打ち切り、輸出されたアメリカでは出演者のクリストファー・リーがほとんど手弁当で上映館まで赴いて宣伝活動を行ったと言う経緯まであった、なかなかに不遇な扱いを受けていた作品だった。だがリーが惚れ込んだという脚本、反キリスト教的な内容、衝撃なラストシーンと、知られざる名作として後にブレイク。かつては滅多に見る事が出来ないカルト作品としての地位を保っていたものだ。
それが、今やDVDで安価に買える。良い時代になったもんだ。
内容的にも大満足。ストーリーの端々に笑える演出が多い牧歌的な雰囲気なのだが、それが雰囲気を全く変えないまま、主人公を今日のどん底に叩き込むと言う妙にシュールな恐怖演出がなされている。
本作は特に主人公の設定が良い。主人公が童貞であることを前面に出し、こういう人こそが魔力的な意味で力を持っているとするのは、いわば“童貞力”と言うのを全面に押し出したことになる。童貞力を設定に取り入れた作品は結構珍しく、その視点がとても面白い(あんまり童貞をこじらせると、連れ去られてしまうよ。と言う教育的な側面は…ないか)。これは一面では大変な美徳でもあるので、それ故にラストの悲劇は全く予測がつかず、視聴者の思いを完全に裏切ってくれる
物語の雰囲気もイギリス映画らしい階虐趣味、根底に横たわるユーモアセンス、そしてメタフィクショナルな設定と、大変質は高く、一見無知な田舎の恐ろしさもよく出ていた。
そして最後に登場するウィッカーマンの迫力と、その下で踊り狂う住民の陽気な歌声は見事な対比になっていて、本当に見事!と言うしかなかろう。
ニコラス・ケイジのリメイク版が本物のクソだった事が、逆に本作を輝かせてもいるので、リメイク版を観てしまった不幸な人は、買ってでも本作を観てほしい。
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