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[コメント] ライアーライアー(1997/米)

ジム・キャリーのギャグ・センスが存分に活かされたハートフル・ヒューマン・コメディ。ハイスピーディーに飛ばすキャリーとのバランスを考え、押さえたテンションの人物で脇を固めた人物設定の巧妙さに深く感心。
TOBBY

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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とにかくキャリーの漫画のキャラクターを見ているようなクルクル変わる表情や動きに圧倒される。笑いのセンスって幾つか種類があるが、この手の映画初期の時代には不可欠であった素直に感情の起伏を動きで表して笑いに繋げる役者ってのは今では貴重。アメリカ的なオーバーなジェスチャーは苦手…という人も本作の上手に展開するストーリーテリングのおかげで無理なく素直に笑えるはず。本作では常にホットで走りっぱなしのキャリーに対し、周囲をがっちり押さえた人物設定で固めて作品の均衡を保っている。自分の意志はしっかりしているものの、どこか夫を忘れきれない妻に穏やかな表情が魅力のモーラ・タイリー。幼い息子も父の行動に怒るよりは悲しむ方に重点が置かれて描かれ、妻のボーイフレンド(エルウィス)もどこか抜けている好人物。秘書も優しい老嬢で、裁判のライバル弁護士も妙齢の女性弁護士。上司の男性も気さくな性格で、上司の女性もキャリーに好意を持っている。顧客の女性(ティリー)もちょっとオツムが弱い風。よーするに誰も真っ向からホットなテンションでキャリーと向かい合う人物設定が居ない。これがデミ・ムーアあたりが一歩も譲らない妻を演じ、そのBFをマッチョか富豪の設定にし、息子が生意気な性格で、秘書がもっと若くキビキビしていて、ライバル弁護士がやり手の男性で、顧客に隙が無かったら映画は打ち壊し。とたんに全部がくどく、キャリーの演出も五月蝿く感じてしまったはず。キャリーのギャグを活かすべく、それ一心で描かれる脚本、演出、人物設定が何気ないようで、だから実は凄く巧妙。脱帽。

追記*映画の主題と違うのだろうけど難しいよなぁと考えさせられたのが妻・モーラの選択。結婚、離婚は当人同士の問題で自由だけれど、そこに子供が入ると非常に複雑。結局、彼女はBFとの間で揺れつつ息子の為に別れた夫を選択するけれど、子供が居なかったらボストンにさっさと飛んでたのかなぁと思ってみたり。その辺も安易にHappyEndにせずに描いていたらシニカルな作品になったのに。

(評価:★4)

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