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[コメント] 頭上の敵機(1949/米)

これもかなり変な映画なのだ。勿論ヘンリー・キングなのだから面白いのだが、落ち着きの良い娯楽映画らしいプロット展開を期待する向きには合わないだろう。しかし、だからこそ監督の力を感じることもできる。
ゑぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 例えばタイトルの『TWELVE O’CLOCK HIGH』というのは空中戦の際にグレゴリー・ペックから吐かれる台詞(敵機の方向を伝える台詞)であり、そういう意味でもこの空中戦から白昼爆撃へ至る航空シーンがクライマックスのはずなのだが、実はそうはなっていないと思うのだ。というか、どこがクライマックスかは見る人次第という感もあるが、しかし明らかに本作の最も気合の入った演出場面は二度目の出撃時にペックの精神が破綻してからだろう。椅子にじっと座ったペックの視線の演技演出こそこの映画の白眉だ。と云うわけで、第二次大戦下の米空軍の華々しい戦果を描いた映画だというのに、その最も重要なシーンは室内で椅子に座り続ける精神を病んだ男のシーンだという奇異さ。そしてこういう「普通の映画」との乖離を演出して尚且つ映画的魅力に転換してしまうところがヘンリー・キングの力量なのだ。

(評価:★3)

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