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[コメント] デビッド・クローネンバーグのシーバース(1975/カナダ)

まさに「皮膚感覚」が味わえる作品。観てる内に全身に痒みが…名作とは言わないまでも、SF好きには一見の価値がある作品です。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 クローネンバーグ監督の長編デビュー作。オープニングシーンからショックシーンが出てきて、第一作目からもはやジャンル映画に突っ走っていった感があるが、この時点で後の『ビデオドローム』(1982)や『スキャナーズ』(1981)と言った監督流の演出は既に確立しているのが凄い。確かに演出とかはかなり安っぽいものの、特に人間の皮膚の下で生物がうごめいているというシーンは、「おお、やっぱりクローネンバーグ!」と思わせる一方、体中にざわざわと痒みを感じてしまう。

 それと、既にこの作品で監督の作風もしっかり確立されているのも興味深いところ。クローネンバーグ監督作品には常に“科学と社会のあり方”というテーマが出てくるのだが、科学の進歩によって人間は変質していくのが繰り返し語られている。それは良い意味もあるが、当然同時に悪い部分も出てくる。その負の部分を乾いたタッチで描くのがクローネンバーグ流と言う奴だろう。この作品でも寄生虫に寄生される人間の姿が描かれるが、これも政府の陰謀で人の理性を失わせるという隠された目的がある。この辺の設定はそのまんま『スキャナーズ』に流用された設定に他ならないが、本作ではまだその辺は不充分かな?

 不充分になったのは、本作ではとにかくエロが多くて、そちらの方に意識の大半が持って行かれてしまったからだろう。まあ、エロって言っても、あんまりいやらしく感じないのもクローネバーグ流かな?

 ちなみに最初の邦題は『人喰い生物の島』だったそうだが、別に人喰い生物は出てこない。

 なんでもクローネンバーグは本作品の映画化を夢見てコーマンの元を訪れ、そこでブレイク前のジョナサン=デミ(と言うか、『羊たちの沈黙』(1991)でブレイクする前はB級ホラーばっか作ってたけど)と出会い、そこで意気投合して本作の撮影に至ったのだとか。だから当時デミの恋人だったバーバラ=スティールがちょい役で登場してる。 

(評価:★3)

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