[コメント] 私を野球につれてって(1949/米)
この4人にエスター・ウィリアムズを加えた5人が主要メンバー。クレジットは、シナトラ、ウィリアムズ、ケリーの順に皆一枚で出てタイトルインするのだが、ケリーが一番目立っており、彼が紛うことなき主役と感じられる。また、有名なタイトル曲(1908年からあるそう)は、劇伴で何度も変奏されて使われているが、歌唱シーンは冒頭近くのシナトラ+ケリーのボードビルショー場面で唄われるのと、中盤にエスター・ウィリアムズが黄色い水着を着てホテルのプールで泳ぎながら鼻歌のように唄う。
時代は1908年頃。前年のワールドチャンピオン「ウルヴズ」のメンバーの記念撮影カットから始まる。主力の2人がいない。監督とコーチが2人に電報を打つ相談をして、ケリーとシナトラのショーの場面に繋ぐ。2人は、メジャーリーガーとボードビリアンのような演者の二刀流なのだ。先に書いておくと、私は野球シーン及びミュージカルシーンのいずれにおいても期待が大き過ぎたのか、少々がっかりした。まず、野球のプレー場面が僅少かつお座なりな描写しかないこと。ミュージカル場面は勿論、悪くないと云うより本作でも見応え充分と云ってもいいのだが、バスビー・バークレイらしい大がかりなプロダクションナンバーが無い、いや大がかりでなくても、男女の群舞のシーンにダイナミックな演出がないこと。調べると、バークレイは途中降板し、ケリーとスタンリー・ドーネンが後を引き継いだらしい。
というワケで、それでも見応えのあるミュージカル場面は多々あるので、少し書いておこう。ケリーとシナトラ2人のシーンだと、最初のタイトル曲のダンスから見せるが、球場に2人が到着してすぐの、ベンチの上及びグラウンドで砂煙を上げながらのダンスシーンがいい(ただし、この場面から、ケリーのオーバーアクトのコメディ演技が気になってしまうが)。ケリー一人の場面では、何と云っても埠頭でのパーティ場面における、長いソロダンスが特筆すべきだ。アイルランド魂が唄われ、アイリッシュ音楽が伴奏で挿まれる中、ケリーの卓越したダンスが延々と映される(ケリーはアイルランド系)。あとは、マンシンも加わった3人で、それぞれの役名、オブライエン−ケリー、ライアン−シナトラ、ゴールドバーグ−マンシンを取り入れた歌唱ナンバーではマンシンが爪痕を残すし、シナトラに猛アタックするギャレットが更衣室から観客席にシナトラを追い詰めながら「運命よ」と唄うシーンもいい。
尚、ウィリアムズに良いミュージカルシーンがほとんど無いのは寂しいが、それが彼女の実力なのかも知れない。いや、本作ではそういう位置に追いやられたのか。彼女は球団オーナーという面白い役柄だし、その部分ではしっかり機能していると思う。もっとも、ドラマ部分は全体に吉本新喜劇のような嘘臭い作劇だが(いや、私は吉本新喜劇ファンですよ)、ダンスをしながらケリーがウィリアムズにキスし、次にウィリアムズがシナトラにキスを求め、さらにシナトラがギャレットにキスをする、キスで恋心に火がつくという、これもよくあるモチーフかも知れないが、こゝは実に良い場面になっている。ウィリアムズの表情の変化がチャーミング。
#備忘でその他の配役などを記述します。
・ウルヴズの監督はリチャード・レインで、コーチはトム・デュガン。
・ウルヴズの負けに賭けるギャング(?)のボスは、エドワード・アーノルドだ。 ・埠頭パーティでモブの女性が唄う部分があるが、一人はサリー・フォレストか。
・ラストソングの歌詞には、ジュディ・ガーランド、キャスリン・グレイソン、ビング・クロスビー、フレッド・アステアに対して「映画に出過ぎず、これからもお元気で」という意味深な部分がある。
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