[コメント] 大いなる遺産(1998/米)
ディケンズを現代劇にする! それだけでもうかなり失敗作の匂いがするなーと思っていたのだが、意外やこれは佳作。思いつきで撮ったかのようで実は考え抜かれている撮影もいい。
「大雑把」「人物像がよくわからん」「思いつきで書いてるだろ!」
ズバリ言ってディケンズの時代の小説ってそんなんですよ。巧妙な伏線や構成上のトリックはない。だってあの時代、ミステリなんてジャンルはまだなかったんだから。謎の人物が出てきたら、それはもうホントに謎の人物なのだ。ヘンに期待しちゃいかん。
大して重要でもない登場人物が、本筋とは何の関係もない話を平気で延々と語ったりする。当時はそれが小説内小説というか、一種の独立した短編小説として普通に機能していたらしい。だってあの時代、短編小説なんてジャンルはまだ成立していなかった。文句言っちゃいかん。
それでもディケンズの小説には、「物語を読む巨大な快感」が確かにある。それはもう、ドーンとある。この映画だっておかしなところはたくさんあるけどそれでも実に美しく、「映画を観る快感」をたっぷりと味あわせてくれる。原作がディケンズなら、オレはそれでいい。目の快楽に溺れるだけである。ああ、美しかった。
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