[コメント] ライアー(1997/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
まず最初に、タイトルは『Liar』だがどうやら嘘吐きは複数いるようだ。一人ではない。 だが、共犯という意味ではない。よってタイトルは単数形なのか。
3月18日 月曜日 エリザベス・ロフタス(レニー・ウィルゼガー)が殺害される。
「僕は公園の下の貯水場を横切っていた。いい夜で散歩がしたかったのさ。で、顔見知りの女性に出会った。ちょっとおしゃべりして彼女と別れた。それきり会っていない」(とある日に行われたジェイムズの事情聴取の弁)
3月27日 水曜日 ジェイムズ・ウェイランド(ティム・ロス)が重要参考人として任意同行を求められ、取調室に入る。 取調官は2名。エドワード・W・ケネソウとフィリップ・W・ブラクストン。ポリグラフの準備が整ったことをケネソウに報告しに行くブラクストン。 このときケネソウはコーヒーを飲もうとしている。角砂糖を手に持ち、コーヒーが白い角砂糖に染み込んでくるシーンのアップ。その後その崩れ落ちそうな角砂糖をコーヒーの中に落とし、ゆっくりかき混ぜてからコーヒーを飲み出す。
二人が入室し、ポリグラフを用いた取り調べが行われる。 質問内容は「名前の確認」「14〜19までに嘘をついたことは?」「供述書の内容が事実か」「同・嘘はないか」「今日は水曜日か」「エリザベス・ロフタスを殺害したか」 ジェームズ、喫煙。 回想シーン。ジェイムズ「自分を信じてろ」
過去の事実シーン「ブラクストンの災難」 暗黒街の女帝、ムックとブラクストンの遣り取り。ムック主催のノミ競馬に賭けたブラクストンの何らかの不正をムックの手下の黒人に連行されてきたジェイビーが吐露したためブラクストンは掛け金20000ドルを4月1日 月曜日までにムックに支払う義務を負 わされる。ブラクストンはケネソウに10000ドルの借金を懇願する。
同日、2度目のポリグラフ。ブラクストンの学歴等に関してジェイムズが挑発的な態度。 その間、ケネソウは妻と電話で会話。「帰りは遅くなる」旨を連絡。内容はブラクストンへの貸し金に及ぶ。画面は机上の妻の写真。
質問内容は「名前の確認」「20〜今現在までの間に嘘をついたことはあるか」ジェイムズ、唾を飲み込み「yes」。「14〜19までの間に嘘をついたことはあるか」の問いにジェームズの回想シーン、父との遣り取りで叱咤された過去を思い出した後、「yes」。「3月18日に関する供述に嘘はないか」「yes 」「今日は水曜日か」咳き込むジェイムス。取調べ中断。トイレで服薬(カルマルマゼピン)。鏡の中でジェイムズの回想シーン。トイレでエリザベスとダンスを踊るジェイムス。ブラクストンにチップを投げ払うジェイムス。床に落ちた札を拾うブラクストン。金に釣られる人間性の強調か。
ブラクストンが自ら担当をケネソウに替わってくれるよう依頼。 無実でもポリグラフによって嘘をついていると判断されるケースもある事を告げ、揺さ振りをかけるケネソウ。 雑談の中で、ジェイムズが、事件当夜アブサンを飲み酔っていたことを告白する。 ジェイムズに死体の写真を見せ、揺さ振りを続けるケネソウ。
「僕は公園の下の貯水場を横切っていた。いい夜で散歩がしたかったのさ。で、顔見知りの女性に出会った。ちょっとおしゃべりして彼女と別れた。それきり会っていない」 酔っていたこと以外、嘘はないか執拗に迫るケネソウ。 「14〜19歳の間に嘘をついている」ジェイムズにその内容を尋ねるケネソウ。 事件に関係ないと言いながらも過去を話すジェイムズ。
ジェイムズの回想シーン。交際相手が寝ている間に性行為に及んだジェイムズ。彼女は翌日から毎晩悪夢に悩まされるようになり、罪悪感を覚えたジェイムズは事実を告白しようと思い立つが勇気がなく、その責任を交通事故で死んだ友人のエディ・ギブンスのせいにした過去を打ち明ける。
ジェイムズとケネソウの遣り取り。ジェイムズ「嘘をつかない人間はいない」
ケネソウの回想シーン。白い服を着たケネソウの妻の帰宅時間が遅く、妻の浮気を疑うケネソウ。苛立ち、妻に八つ当りするケネソウ。
喫煙しようとするジェイムズ。煙草に火をつけてやるケネソウ。ライターの火が目前に迫っても左目の瞳孔が収縮しないジェイムズが「何か」を服薬したことに気付き、一旦ブラクストンと退席する。 ちなみにこのときウェイランドは煙草の煙が目に染みたのか、左目を瞬きしている。 ポリグラフの針はその間全く反応しなかったと告げるブラクストン。
方針転向して懐柔策で攻め落とすことを確認して再度入室する二人。
何故動揺しているか尋ねるケネソウ。取り調べ中に薬を服用していることを指摘し、その行為は何かを隠したがる人間の取る行動だと追及するケネソウ。 ウェイランドはTLE(側頭葉に異常が起こる病気)を患っていることを告白。発作が起こりそうになったためトイレで服薬したと伝える。 発作の原因はストレスだと告げ、過去にある女と性行為前に発作を起こした回想シーンが挿入される。
ポリグラフの正確性を説明し、ジェイムズに「君は嘘をついている」と断言するケネソウ。そして「今日の取調べはここまでだ」
それに対し、「いいか。僕が君ならもっと気をつける。余計な真実を掘り起こして苦しまないように・・・」と言い残して取調室を後にするジェイムズ。
帰宅後のケネソウ。妻との些細な口論。子供が3名いることから間違いなくこのシーンはケネソウの自宅のようだ。 電話が鳴り、仕事に出掛けると告げるケネソウ。常日頃から家庭を顧みず仕事を優先するケネソウの人となりが子供たちの会話から推察できる。
3月28日 木曜日 ケネソウとブラクストンはTLEの病気に関して調べるためにバニーヤード精神科医を訪れる。
精神科医の話の内容は、ヴィンセント・ヴァン・ゴッホの例を出しアブサンがTLEの発作を誘引する可能性が高いとされていることを告げる。 ゴッホが自分の耳を削ぎ落とした逸話の内容はこうだ。 早朝からアブサンを2杯飲んでいたゴッホは鏡を前にして髭を剃っていた。その時、同じ画家であり彼の愛人と噂されているゴーギャンから別れを切り出される。それで激怒したゴッホはトランス状態に陥り、剃刀を振り回しながら階段を駆け下り、こう叫んだ。「お前を殺してやる!」 それを見てゴーギャンは冷静にこう言った。「いっそのこと自殺したらどうだ?」 ゴッホはゴーギャンを妙な目で見つめながら自分の耳を削ぎ落とした。それを拾い、たまたま傍を通りかかった娼婦にその耳を渡した。。。 精神科医は発作の兆候を挙げ、留意するよう指示した。
同じ日、ジェイムズは父と食卓を囲みながら口論になっていた。定職にもつかず遊び歩く息子に繊維会社の社長であり富豪として名のある父は自分の息子にほとほと愛想を尽かしている。母は息子を庇おうとするが父はそれを許さない。 ここで、妙なシーンが挿入される。
ジェイムズが持っていたナイフで母を刺し殺すシーン。 だが、その後シーンは元の食卓に戻り、黙り込んだ父と優しく微笑む母親が映し出される。ジェイムズの表情は白目を剥き、発作の兆候が現れていた。
場面は変ってブラクストンの部屋。ブラクストンはTLEに関する学術書を読んでいた。 TLEの発作にはいろいろな兆候があり、患者は無意識またはトランス状態で複雑な行動パターンを示す。家具の上に昇り服を脱いだり、怯えたりする。中には暴力的になる者もいる。そうした行動は患者の記憶に残ることはまずない。。。 この間、映像はブラクソンの朗読に併せて同じような行動を取るジェイムズが映し出されている。
と、その時、ブラクソンの部屋に石に括り付けられた脅迫メッセージが投げ込まれる。差出人はムック。「期限は月曜日よ」 投げ込んだ相手が誰かは明らかにされていない。
ここでまた場面が変る。ケネソウの寝室だ。黒い下着をつけた妻がケネソウに夜の営みを迫る。が拒み続けるケネソウ。「いい加減にしてくれ、もう十分楽しんだだろう!」激怒するケネソウ。理由は謎だ。しかも、この女性が確実に妻なのか、そうでないのか、現時点では不明。
またまた場面は変ってブラクストン。彼は教会のフランク司祭を訪ねる。懺悔室に入るとフランク司祭に10000ドルを手渡す。フランク司祭はムックの手下のようだ。この10000ドルはおそらく(いや間違いなく)ケネソウから借りた金だ。フランク司祭は言う。「ムックが20000ドルと言ったら素直に払え。逆らうな。あの女はこの町を牛耳っている。今回は10000ドルで頼んでみるが、残りの金も早く用意しろ」と。
3月29日 金曜日 警察署内。新聞記事に女性の切断死体が発見された事が報道される。「意外に時間が掛かったな」とブラクストン。 鑑識の結果も芳しくない。ケネソウと雑談するブラクストン。昨夜の脅迫状の件を話すが、ケネソウは「これ以上金を貸せない」と言う。冗談か本気か「こいつに金を借りろよ、金持ちだ」とジェイムズの捜査資料をブラクストンに放り投げる。
今日の取調べ方針を相談する二人。友人が少ないジェイムズと親しくなり、ジェイムスが家族の話を切り出したら、「俺も同じ経験をした」と肩に手を回せとブラクストンに指示を出すケネソウ。
取調室。今日もポリグラフをつけられ椅子に座るジェイムズ。ブラクストンはカードゲームをやろうと持ちかける。嘘のつき方を見るためだ。 5枚のカードをテーブルに並べ、1枚を心の中で指定する。全てのカードを1枚ずつ指差していくから全ていいえで答えろ、という簡単なものだ。 ジェイムズはスペードのエースを指定した(画面がそのカードにズームする)がポリグラフが示した結果は別のカードの時だった。 ジェイムズは自分はスペードのエースを指定したがわざと他のカードの時に動揺してみせた、と言う。
「僕は公園の下の貯水場を横切っていた。いい夜で散歩がしたかったのさ。で、顔見知りの女性に出会った」(とある日に行われたジェイムズの事情聴取の弁) 再度冒頭で流れたジェイムズの供述テープが流れる。途中でテープを止め、ケネソウは「顔見知りの女性」という部分が嘘臭いと言う。
ジェイムズは語り出す。彼女とは初対面だった、と。 場面は回想シーンへ。ストリップ小屋の個室。ガラスを挟んで電話で会話するエリザベスとジェイムズ。ちなみにエリザベスがこのとき身につけている下着は黒だ。 話している内容は大した事がないようなので割愛する。 ジェイムズが自分の生い立ちに関して悩みを抱えていることを見知らぬ娼婦に語るシーンだ。
嘘が一つ見つかった。 ならばもう一度最初から供述内容について最初からポリグラフをつけて証言するようにケネソウはジェイムズに言う。 ジェイムズは自分が供述時に酔っていたと言う。アルコール依存症だと。だが、嘘吐きではないと。
ケネソウはそれに対し、ジェイムズとエリザベスは初対面ではなく顔見知りだったと断言する。 場面は再び回想シーンへ。 黒い服を身にまとったエリザベスとジェイムズは親しげにパーティ会場へ。 両親にエリザベスを紹介した直後から狂ったように笑い出すジェイムズ。
取調室。ジェイムズはあくまで「知らない女だ」と主張する。 その日の出来事を最初から話すよう促されるジェイムズ。 ジェイムズはその日、父とオフィスで口論になったと話す。 回想シーンでジェイムズの父は激怒している。「二度とあんな馬鹿な真似はするな。お前は私の息子じゃない!」 何が原因で口論になったかは明かされない。 取調室。父との口論の理由を問うブラクストン。「私も若い頃は父とよく喧嘩になったものだ」と同意する。作戦通りだ。 ところが、ジェイムズは同意したブラクストンに対し、「お前のような貧乏人が僕の気持ちを理解できるか」と言う。 そして、ブラクストンが貧乏で10000ドルの借金を抱えていることも知っていると話す。ケネソウから借金していることも、前職が警備員のアルバイトだったことも全てお見通しだと話す。
ジェイムズは突然ブラクストンに対し、取引を持ち掛ける。「金をやるから無罪放免にしろ。悪魔との取引さ」制止するケネソウに「黙れ、ケネソウ。一生金は取り返せないぞ」と言い放ち、「もともと取引する理由なんかない。僕は隠していることはない。無実だからな。」とブラクストンとの会話を進めるジェイムズ。 「何故借金のことを知っている?」そのことが気になるブラクストンを尻目に、ジェイムズはその日起こったこと(父と口論になり酒を飲み公園に散歩に出た)の続きを話し出す。
「公園に入り貯水場の下まで歩いていくと、女がいた。彼女は誰かと待ち合わせをしていたがすっぽかされたと言った。」 「だが、その女は娼婦だぞ」とケネソウ。 「いいや、そうは見えなかった。社交界にデビューしたてのレディに見えた。」 彼女との会話の内容を問い質すケネソウ。
このシーンは大切なシーンのように思える。カッコ内はジェイムズの独白。かぎカッコ内はエリザベスの口から出た言葉。 (僕が近づくと彼女は「今何時かな?」と聞いた。10時50分だと答えると「もうヤだ、あいつ」彼女はこう言った。「約束をすっぽかされたのよ」って。その男をぶん殴ってやろうかと言うと「彼を知らないでしょ」そう言った。だから僕は顔が広いと言ってやった。「チャールズ・ウォーリー。知らない男でしょ」彼女は言った。ところが僕は知っていた。投資会社の社長さ。うちのような大富豪を相手にする会社さ。僕は言った。チャールズ・ウォリントン3世か。父親も知ってるよ。「お金持ちなのね、だからって何さ!」と言い返され僕は肩をすくめた。)
ここから、回想シーンとジェイムズの供述に微妙な差異が生じる。
「ねぇ煙草持ってない?」(ねぇ、何か飲まないと彼女は言った。また今度と僕は言った) 「え〜、煙草が切れて。。。一服したいのに」(で、連絡先を聞かれたので紙に電話番号を書いたんだよ) (その時向こうから足音が聞こえてきた。それに音楽がどこからともなく聞こえてきた。。。そうその曲は、あのバンドの曲だ、何だっけ、えっと〜) 考え込みながら、供述途中から発作が始まるジェイムズ。突然立ち上がり白目を剥き、椅子の上に上り、衣服を脱ぎ出すジェイムズ。 危険なので手を出さないよう指示するブラクストン。その時取調室内のロールカーテンが上がり、驚くケネソウ。驚きを隠すかのようにジェイムズに触れようとしたケネソウに対して突然暴力を振るい出すジェイムス。ジェイムスを取り押さえたのはブラクストンだ。応援を呼び、手錠を掛けられるジェイムズ。
3月30日 土曜日 昨日の取調べ中録画されていたビデオテープを持って、ブラクストンは再びバニーヤード精神科医を訪ねた。 精神科医は言う。「発作が起きたら気をつけろと言った筈だ。発作が起きれば患者は妄想を始める。彼を拘留したいなら証拠が必要だ。だが、証拠がない。物証は彼の電話番号が書かれたメモとこのビデオテープだけ。だがこれは証拠にならない。病状を裏付けるだけだ。。。」
物語はここからがクライマックスなのだが、すまない。少し疲れた。。。
今日はここまでにしておくよ。アブサンが切れたようだ。眠い。無性に眠い。
続きが気になるなら、是非作品を観てくれ(白目)。
余談だが、アブサンとは、飲むと幻覚作用を伴う「禁断の酒」として約一世紀もの間、発祥地のスイスで製造・販売が禁止されてきた蒸留酒。もともとはフランス人医師がスイスで医薬品として製造したもの。ニガヨモギ他多くの薬草や香草で風味づけされたアルコール度数70度近いリキュールでその色から「緑の妖精」とも言われている。
このアブサン、2005年3月1日毒性や幻覚作用に科学的な根拠はないとしてスイスで禁止法が廃止され、事実上解禁となったことを付け加えておこう。
続きはいつか書く。約束だ。僕は嘘吐きじゃない。。。
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