[コメント] スウィート・ヒアアフター(1997/カナダ)
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バス転落事故の訴訟の顛末を描いた映画。
裁判ものの映画のような展開だが、あくまでもバス転落事故により信頼関係が崩壊しつつある町の人々の心の葛藤に焦点をあてた映画で、事故以前には家族同然の付き合いだった町の人々がバス事故のために信頼関係が崩れてしまうことへの不安が損害賠償の訴訟を呼びかけようとする弁護士の視点で淡々と描かれる。
ラストははたから見れば、二コールは酷い人に見えるが、彼女の中ではこれ以上町の人たちが争うのを見たくないという苦痛や事故で唯一自分だけが助かったことへの罪悪感、表面的にはやさしさを装いながらも、本当は二コールの遺産を欲しがっていた父親への恨みなどの思いからあの行動に出たのかなという感じで、彼女が事故の被害者の子供たちや遺族への罪悪感をハーメルンの笛吹きに例えた伏線も効いてなかなか印象的。
この映画は本来なら正当な行動であるはずの事故の訴訟が被害者側からすれば事故の傷を抉り出して人間関係を崩壊させてしまう要因になってしまうという矛盾さが根底のテーマとしてあり、興味深く見れた。
あまりドラマとしての盛り上がりはないが、誇張した展開でドラマを盛り上げようとする映画よりもこの映画の方がずっと素直に伝わってくる。
ただひとつだけ不満があるとすれば、二コールが町の人たちが事故のことで醜い争いするのを見なくない上でラストであの行動に出るのだが、そのためにバスの運転手の女性が犠牲になるのにこのことを考慮している様子がなかったのがちょっと解せない。
役者としては二コール役サラ・ポーリーの演技と美しい歌声が印象的。
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