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[コメント] クロウ −飛翔伝説−(1994/米)

想う心の強さ。
ymtk

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画で自分がまず感動したのは,その映像美。救いや希望のかけらもない街の様子,闇を飛ぶカラスの目から見えるそれらの街並,死んだ彼女の化粧を使ってエリックがほどこすメークなど,どれをとっても非常に「美しい」。特に,エリックがカラスとともにビルや家屋の屋上を駆け抜けていくシーンが秀逸。

さらに。自分がこの映画を好きになったのは,エリックの「彼女を想うこころ」の強さ,というかひたむきさに感動したからかもしれない。蘇った後,脇目もふらずに復讐を果たす。蘇った後の生の意味が復讐それ一つに極限までしぼられている。そこに自分は不思議な感動を覚えてしまった。

ちなみに,この映画は続編「クロウ2」が作られている。続編といっても,役者も違うし,話も違うので,別の物語という感じになるのかも。全作から引き次いでいる設定というか役は,サラという少女。この少女は前作では小さくて,エリックの妹的な位置づけだったのだけれど,「クロウ2」では成長していて,今作の主人公であるアッシュという男性を蘇らせるための重要な働きをする。

で,「クロウ2」の出来なんだけど,まあまあだが,前作の持つ力を越えるものではなかったように思う。まず言えるのは,アクションシーンのレベルの違いが大きいということ。前作の主人公役をやったブランドン・リーは,ブルース・リーの息子で,もうアクションはお手のものだったんだけど,今作の役者さんはどうもそういう人ではないらしく,アクションに今いちキレがなく,超人性や神秘さを十分には醸し出すことができてなかったように思う。

それと,前作との一番の違い,というかミスは,今作の主人公アッシュが,自分が復活したことの意味を自分自身でつかみ取ることがなかったところ。

前作の主人公エリックは,なにもわからぬまま復活し,恋人とともに惨殺された時から時間の止まったままになっている二人の部屋へ行く。彼はそこで恋人との生活を思い出させるものを見て,触れることで,幸せだった日々を思い出す。そして,彼女の遺品に触れることで,暴行され,惨殺されるとき彼女が感じた痛み,苦しみ,恥辱のすべてを体験し,そのあまりのむごさにのたうち回る。エリックは,そうやって苦しむことで,自分自身が今こうやって蘇っていることの意味をつかみ取った。自分で自分の生の意味をつかみ取ったのである。そこが自分としては,ものすごく感動するところであった。それに対して,今作のアッシュはサラの手助けを必要としていた。その分だけ弱いような気がするのだ。

(評価:★5)

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