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[コメント] プライベート・ライアン(1998/米)

全く持って最初からこの映画の背景に納得できない。何故、彼らは行かなければならなかったのか。
mimiうさぎ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







8人の兵士がブーブー言っていたように、本当に納得できない成り行きだった。ベトナム戦争後、ジョン・レノンらが必死になって訴えたおかげでか、国民意識が変わり「反戦」への思いが強まってきた。それ以前の戦いである1944年に、国家が4人の兄弟の行く末を案じる事などあっただろうか???

例えあったとして、(映画で見る限り)優秀な戦士ばかりを8人も行かせるなど、緊迫した戦争下では考え難い。特に、狙撃手ジャクソンなどは、強力な人材であるのに、そんな無駄な戦いの駒に使うなんて…。この辺りに、「色気」が伺える。

多くの人が触れるよう冒頭の、嘔吐する兵士、火だるまの兵士、容赦なく襲い掛かる銃弾。自分のちぎれた手を持って、オロオロとする兵士、脅え足を抱えながら泣き叫ぶ者、必死に蘇生を施す救護班の甲斐もなく命を落す兵士達。そのあまりのリアルさに驚き、恐怖で「停止」ボタンを押してしまった。

しばらくして、再見。やはりすごい。何度見ても、身の凍るような場面。戦争映画でこれほどまで、気分が悪くなった(あまりにリアルすぎて)のは初めてだった。そして、今までの戦争映画が、いかに「偽善」というベールで覆われていたかが分かる。この冒頭だけで充分な「反戦」へのメッセージが込められているのではないだろうか。

ストーリーは続く。冒頭の衝撃的なシーンから一転、人間ドラマの始まりだ。

府に落ちないシーンがある。ミラー大尉が皆の反対を押し切ってまで、機関銃陣地を攻めるシーン。何故彼が急に高揚して、感情的になったのかが納得できない。「子供を預かるな!」と戦火で冷静な判断の出来る人物でありながら、なぜあの時、大事な部下を危険にさらしたのか。感情的になって部下を失い、冷静になってドイツ人を助ける…これが最後のシーンの伏線になっているのだが、ミラーの行動としては府に落ちないシーンだった。

逃がされたドイツ兵の絵描き方も、あんまりではないか…。日本人の「恥をかかされる(捕虜に)なるくらいなら自決。」魂を見て育ったもので、こうも形振り構わず命乞いされると、興ざめしてしまう。片言の英語を話してみたり、アメリカの国歌を歌ったり、そりゃみじめったらしい姿は強調されるけども…。ドイツ人とくにナチス兵があんな事するかなぁ。その点詳しくないけれど、ユダヤ人のスティーブン・スピルバーグの私怨が入っているように思えてしまう。

見間違えでなかったら、最後の戦闘で再び周りの音が聞こえなくなったミラーが目にする者の中に、膝を抱えて泣き叫ぶライアンの姿があったように思う。オイ!お前のせいで、隊は戦う事になったんだぞ!だったらもっと勇敢に戦えよ!お前の為に命を失った隊の者が浮かばれないじゃないか!しっかりしろよ!

と、鼻に付くストーリーではあったものの、とにかく俳優が良かった。あまりに良すぎて、書ききれない。

納得できない部分はあるにしろ、この映画が素晴らしいと言う事にはかわりがない。

(評価:★4)

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