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[コメント] 悪霊島(1981/日)

「あの島には悪霊が取り憑いている。鵺の泣く夜には気を付けろ」この台詞が横溝正史から我々日本人への遺言のように思えてくるそんな作品。岩下志麻の演技の凄さも光る、金田一シリーズの隠れた名作! ・・・現代人の失っているもの、それは静かで激しい拒絶・・・ 「あの島」は日本の縮図だったのかもしれない
Myrath

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「あの島には悪霊が取り憑いている。鵺の泣く夜には気を付けろ・・・」

「あの島」は「日本の縮図」を表現しているように思えた。だがそれなら「鵺」は何を指しているのか?

何れにせよ「源平合戦」は今現在も続いている日本の問題とでも言いたげな横溝節はこの作品でも炸裂!。映画は横溝正史が目指す真の方向性を理解し踏襲した上で更に精神世界的な意味をも加え描いている。どちらかといえば純粋に推理を楽しめる市川崑的な作風ではなく野村芳太郎の『八つ墓村 77年』の様な作風と言えるかも。

それとジョンレノン殺害について。ジョンレノンの殺害事件はこの映画と一見無関係なのだが、もしかしたら最大の裏テーマだったようなそんな気もする。

----みどころなど-----

 ・巴の別人格にふぶきが居る様になっているが逆かもしれない。原爆に遭遇し脳に障害を持ったふぶきが巴の人格を持っていたとも思える。  ・巴の生死も行方も不明。幻のように存在が消滅。(島自体も含め巴もふぶきも元々存在していたのかどうなのか)。  ・ふぶきは原爆犠牲者(日本を表現するとき不可欠)  ・ラストで伊丹十三の乗った船を見つめる岸本加世子は完全に母親の後を継ぐ存在と化している。  ・ラストの海を漂う神輿。これなんかは「これが日本の運命だ」とでも言おうとしているのだろうか。  ・岩下志麻の演技!解離したもう一つの人格の目と口が別人。ふぶきの方が可愛らしく見えるという恐ろしさ。小津安二郎に「人間は悲しい時に悲しい顔をするんじゃない。喜怒哀楽はそんなに単純なもんじゃない」と教えられた岩下の演技だ。  ・作品に絶対不可欠だったであろう「自慰」シーン。(そんな高尚なものでなく単なる篠田正浩監督岩下志麻夫婦の変態プレイかも)  ・金田一キャラがなかなか良い鹿賀丈史  ・俳優伊丹十三の出演  ・猿回しの太郎次郎が出演。そして子供の名前は太郎丸と次郎丸。  ・第4作『緋牡丹博徒 二代目襲名』(1969年4月10日公開)の立て看板。&意味ありげな精神科の広告看板  ・お祭の弓の的が"目"。右と左とでは意味が異なるが、あとのシーンからそれがどちらなのかが分かるように配慮されている。(非常にマニアックである)。  ・現在、ビートルズのオリジナル楽曲をサントラとして使えなくなっているのは残念。(現在はビリープレストン参加の別バージョンに差し替えられている)

(評価:★5)

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