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[コメント] ポルノスター(1998/日)

音楽センスも映像センスも『青い春』の時の方が断然良いが、やはり、この作品でもその非凡なセンスは十分見えてくる。カッコイイ。 2003年3月29日ビデオ鑑賞
ねこすけ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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確かにカッコイイ。特にナイフの雨のシーンや、あのヤクザの組長を駐車場で刺殺するシーン(現実にゃあんなのできねぇ!)、それに、クライマックスの事務所の殴りこみ等凄く好きだった。スローモーションを多用し、激しい音楽を垂れ流すセンスは逸品。カッコイイ。

しかし、登場人物に魅力が無い。主人公の名前も無いようなふわふわした優柔不断な男が、冷酷に「いらない」ヤクザを消していて行く姿、そしてその動機は「いらないから」だけと言う、単純明快さや、その周りを取り囲むチンピラの上條など、カッコイイのだが、彼らに感情等ない。

この映画でカッコイイのは、結局の所映像的にカッコイイモノを寄せ集めただけという感じが残り、主人公が何人ヤクザを殺そうと、登場人物が入り乱れてLSD争奪戦を繰り広げようと、誰が殺されようとどうでも良く感じ、クライマックスに行き着くまで、少々退屈ではあった。その退屈さは、映像や音楽面がどうにかカバーしていてくれたし、所々カッコイイシーンがあったので許そう。

しかし、話としては酷い。プロットは面白い。「いらないヤクザを潰す少年。ある日LSDが絡んできた事で・・・」と聞いただけでぞくぞくして来た。そしてオープニングからスローモーションにあの音楽。もう、冒頭から興奮しっ放しだったが、主人公、いや、登場人物全員の感情の薄っぺらさや、とってつけたような恋愛等、心理描写が皆無に等しく、暴力の動機付けも薄い。むしろ無い。

せっかく「やくざを潰す」と言う、大掃除的な「怒り」をもっているにも関わらず、主人公には怒りなどと言う感情を感じる事すら出来ない。これでは、所詮見せ掛けだけのバイオレンスに終わってしまう。やはり、暴力の裏には感情の爆発が欲しいものだ。

しかし、素材を生かしきれていない、という不満が残ったものの、この監督が後に繊細な10代の不良の心理を描ききったと思うと、これで良い気もする。この段階ではまだ進化途中であったのだろう。これが、この監督の実力の限界でない事を祈る。

けど、本当に何箇所かはめっちゃカッコよかったんだけどなぁ・・・(^^;本当に惜しい作品。

(評価:★3)

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