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[コメント] ルル・オン・ザ・ブリッジ(1998/米)

さすがにハーベイ・カイテル も老けたなあ。オースターらしいラヴ・ストーリー、と敢えて言い切ります。
Alinax

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







人は最期に走馬燈の如く自分の一生を一瞬でみるという。

フロイトに倣い、夢が自分の満たされぬ願望、深層心理の某かを反映すると仮定するならば 一連の物語が人生の願望や絶望、記憶の片隅にへばりついてはがそうとしても とれない何か嫌な思い出、または抑圧となり、種々に形作られていったものだと解釈可能だ。

しかしとりわけタイトルから、ルル(妖婦・小悪魔的な魅力を持つ女性の典型)との恋愛についてが テーマだと推察できるだろう。また「橋」は心理学では夢のようなすばらしい恋愛をしめすらしい。

人が死ぬときに、この映画のような恋愛を擬似的にでも経験できるならば、それは人にとって 幸福だろうか。それとも不幸なことだろうか。 ましてや現実世界において、このような恋愛は滅多にないとなると、どうだろう。

仕事は残るが、恋愛は残らないと作中で老女優が言う。 しかしオースターは恋愛を現実に映画化し仕事とすることで、恋愛を永遠のものにしてしまった。 これがラヴ・ストーリーでなくて何だろう。

セリアの疑問に思えるほどの恋愛感情は、主人公の願望がもたらした結果なのだ。 だがいまわの際のフラッシュ・バックがかくも美しい幻想を作り出すとはなんと皮肉なことか。

ハーベイ・カイテル は老けすぎだけれども、映画的に許される年齢の役柄としては ギリギリの線かもしれない。ということはやはり適役なのだ。人生を終える人が、 最期にこんな夢を見たっていいではなかろうか。つまりロマンスと死に逝く者の哀愁 二つのバランスをとった結果がカイテルということになる。

さて理屈としてはそうなのだけれども、恋愛映画としてはやや退屈な感は否めず 本当は3点を付けたいところだ。が、あいかわらず堅実な撮り方で、ソツがないし 映像化されたことに意義があるので、ボーナスで4点つけとこう。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)kekota[*]

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