[コメント] ベティ・ブルー/愛と激情の日々(1986/仏)
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DVDのパッケージやら何やらで、激しい愛とか激情とか言うからベッド破壊するくらい激しい勢いなのかと思ったら・・・ということは置いといて、正直完全版の三時間は結構キツかった。そして長かった(という程でもなく、大きさの割には露出しすぎじゃないかと)。しかし「つまらない」と言って切り捨てられないし、積極的に高得点をつけたいとも思えなかった。年齢や恋愛観によっても大きく評価が変わってくると思われる、とても採点の難しい映画だった。
本当に誰かを好きになると、授業中だろうとテレビ見ているときだろうと常にその人のことが頭から離れなくなる。会いたい、一緒にいたいと願う。終いには本能による激しい欲求に駆られ、自分の意志とは無関係に何かが動き出すことは置いといて、多くの恋愛映画というのは出会ったり、恋をするところから始まり、それが成就する(若しくは一方をストーリーの流れで死なせてお涙頂戴に仕立て上げる)ところまでを描き観客はその行方を見守るものである。この映画ははしぼそがらすさんが言うように[「二人は恋に落ちました、メデタシメデタシ」の後を描いた]作品であり、そんな二人の終局までの旅路を描いたロードムービーであるところが、他の映画とは一線を画していると思った。
個人的には最初からヒステリックなベティにかなりの嫌悪を感じたのも事実である。そしてそれが映画を余計に長く感じさせた原因であるとも思う。しかし、後半の精神に異常をきたしたかのようなベティの行動は、ペンキをオッサンの車にぶちまけたり、家に火ぃつけたり、店で女を刺したり出版社の男のところに殴り込みへ行ったりした、観ている側が腹立ってくる前半のヒステリックなベティの行動とは違い、あまりにも痛々しかった。「ゾルグが作家として成功すること」「赤ちゃんを産むこと」・・・思えばベティの夢は行動に比べれば常軌を逸していない、ごく普通の平凡な夢だった。だからこそそんな夢が失われて少しずつ壊れていくベティと、それを救おうとしても救えないゾルグの姿に今までの映画では経験したことのない恐ろしさまでも感じた。
俺にはあの女に惚れる理由は少々分からないのだが(俺も偉そうなこと言っておいて結構面食い)ゾルグとしては、そんなベティであるから、幸福で楽しい生活が送れたし、そんなベティがいたから女装して強盗したりと少しでも生活を良くしていけるように頑張れたのだと思う。だからこそ自分の体の一部を失ったかのような喪失感にあふれたラストは余りにも哀しすぎる。誰も悪くなかったのだから。
溜息が出るほど美しいカットや心に響くシーンも多かったが、完全版の三時間は個人的に長すぎてダルかった。ひとまずもう少し年をくってから通常版を観るまで、保留の意味も兼ねて★3にしときます。
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