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[コメント] ガス人間第一号(1960/日)

ガス人間のエゴも結局警察やマスコミのエゴと変わらない点は興味深い。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ガス人間の男の末路を描いた映画。

最初の感じだとサスペンスタッチな展開でタイトルをガス人間としている以上、サスペンスものとして観ると犯人の正体が初めからセわかってしまうため、かなり冗長な印象だったが、中盤でガス人間の正体が判明してからは30年代のアメリカの怪物映画の雰囲気に近くなり悲壮感が増した。

この映画で関心するのは最初は連続強盗殺人事件の解決に全力をあげていた警察を善の存在として見せながらも、ガス人間の正体がわかり、ガス人間から取引を持ちかけると容疑者として挙げていた藤千代を利用してガス人間を逮捕しようする姿が描かれいる点。つまりそれまで善人として見えた警察がどんどん悪人に見えてしまうところである。警察が藤千代を利用してまでガス人間の逮捕に踏み切ったのはある種不安の声を上げる一般社会のためとも見られる。しかし、それまでの藤千代への失態を全て棚に上げて逮捕のために藤千代を利用しようとしている点では、最初はガス人間を批判するような記事を書きながらも、後々に特ダネの道具として利用しようとするマスコミと同じエゴなのかも知れない。

しかし、マスコミにいいように利用されたガス人間こと水野でさえ騙されて実験対象にされてしまったという立場は被害者ともとれるが、自分に与えられた特殊能力を善のためにも利用することもできるのに、あえて私欲のためにしか利用せず、藤千代の立場も考えずに自分の主張を押し通していて、水野のやっていることも客観的に見てしまうと警察やマスコミのエゴと一緒に見えてしまうところは興味深い。

役者としては主役である刑事を演じる三橋達也や藤千代を演じる八千草薫は重要な役割の割にはストーリーにあまり絡んでこないので印象が弱いが、ガス人間の水野を演じる土屋嘉男はなかなか存在感のある演技で最初から彼の視点で話を描いていれば藤千代との関係にもより深みが増したように思う。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)荒馬大介[*]

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