[コメント] 機動警察パトレイバー 劇場版(1989/日)
実体のない敵の存在…それが実体のない恐怖を生む。その映像、世界観により、一級エンターテインメントアクションであると同時に、その映像、世界観により、一種のホラー映画でもある。どこかが、怖い。(2006.04.30.)
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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キャラクターよりも完全に映像が勝っている。この物語に主役は存在したのかと問われた場合、主役は映像だと答えざるを得ない。キャラクターが殺されていると考えるとアニメーションとしては欠点でもあるが、映像と、近未来を予期した世界観は完全にその欠点を補っている。クライマックスの台風が迫り来る中のスペクタクルは、下手なハリウッド大作よりもよっぽどエキサイティングであり、圧倒的な魅力を誇っている。
主役が存在しないということの暗喩でもあるかのように、敵ももはや存在していないというのが非常に興味深い。帆場という男はすでに命を絶っていて、実体すらない。実体のない敵によるテロリズムと戦う警察。終盤の展開は娯楽作の様相を取っているので、誰もが興奮して画面に目を向けるだろうが、争っている相手が存在していない中で娯楽作的な盛り上がりにのめり込んでしまうこの図式……あとから考えると、ものすごく不思議である。ハッピーエンドのはずのエンディングになぜか虚無感のようなものを感じたが、それがなぜか妙に印象的だ。
これは一種、ホラーのような映画なのかもしれない。鳥の群れを見たとき、ヒッチコックの『鳥』と似たような恐怖感を感じた。そう、『鳥』も人を襲う理由など僕らにはまったくわからなかった。
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