[コメント] 熱帯魚(1996/台湾)
序盤は、主人公の中学生ツーチャンの日常描写。学校の様子。受験戦争。首にコルセットをした厳しい女の先生。友達とゲーセン。憧れの女の子へのアタック。この時点で何度か熱帯魚も映るが、幻想シーンの潜水艦などチープな美術含めて、かなり未整理な感覚を持つ。
この映画が良くなるのは、ツーチャンが誘拐事件に巻き込まれて、プロットがギアシフトしてからだ。2人組の誘拐犯が1人になってしまう、というツイストにも驚いたが、残った男の故郷、海辺の町(東石村、東石郷。『1秒先の彼女』と同じ海辺)へ舞台が移ってから、本作の基調となるリズムと画づくりが明確になる。もっとも、タイトな展開になるワケではなく、逆に緩々の牧歌的状況が味わい深くなる。
まず、匿われた家屋が、床下浸水しており、水が引かない、いったん干上がっても、近くの水門が壊れており、再度浸水してしまう、という舞台づくりがいい。そこで、軟禁されるわけでもなく、誘拐犯の家族たちとの共同生活となる。見えない人と会話するお祖母さん。口をきかないお姉さん−チュエンへの恋。誘拐犯たちは、人質に危害を加えることなどつゆとも思っていない。入試のために勉強を頑張れと、本を買ってくるのだ。
全編通して、一番愉快なのは、誘拐犯一家が、とんちんかんな脅迫電話をかける場面だろう。電話の会話が漫画で表現される趣向も楽しい。しかし、私としては、砂浜で主人公も一緒になって砂のウンチを作るシーンが好きだ。この無為な時間がいい。こゝは、ホウ・シャオシェンっぽいとも思う。これで、お姉さん−チュエンとの熱帯魚をめぐるやり取りが、もっと鮮やかな見せ方であればと思う。
#本作でも、学校のシーンで「仰げば尊し」が流れる。
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