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[コメント] 死国(1999/日)

ここでの篠田昇の撮影は実に怪奇映画然としており、はっとするほど美しい光の扱いを見せる。よく揺れたり動くカメラも、覗き見るようなカメラ位置や浮遊する動きと相まって霊魂の視点を通して観ているような感覚を与え悪くない。75分過ぎまでの、霊を極力見せずに、風や視点によってその存在を印象付けていく演出手腕の見事さ。これは良作だと断言できる。
赤い戦車

夏川結衣栗山千明宅の部屋に灯りが点るのを見たカットの後、次に繋がれるのは既に玄関に向かって歩いている夏川の姿を捉えたカット。また、筒井道隆の上司が幽霊を見かけるシーンでは、彼が何故夜中その場所に居たのか、或は懐中電灯を持たず何故ライターを光源にしているのか、示されることはない。そういった心理的な「理由」を示すことを極端に嫌う部分は万田邦敏によって補強されているのかもしれないが、それをきっちり映画の画面として仕上げる長崎俊一の職人的力量は決して無視できるものではない。本作に限らず、長崎俊一の仕事ぶりはもっと評価されてよいものだ。

話が荒唐無稽であることは、些かも瑕疵ではない。そもそも映画は「現実」ではなく「作り物」だと思うので、「リアリティ=現実らしさ、本当らしさ」を求めても詮無いことだと私は考える。

(評価:★4)

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