[コメント] シン・レッド・ライン(1998/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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もう一つの世界を見た、といっていたウィット。争いのない平和な世界、もう一つの世界だと信じていた原始社会に争いと死の影を見つけてしまったとき、彼は死に向かって走り出した。
戦争が終わったあとで、戦争の起きた原因を類推し、批判することはたやすい。しかし、それならば戦前を生きた人間がわれわれよりずっと愚かだったのだろうかといえば、そんなことはない。戦前の人々もわれわれと同じように平和を願い、われわれと同じように生きることを望んでいたはずである。それでも戦争は起きた。戦争批判は、結局のところ欺瞞なのだ。われわれは殺されそうになれば、武器をとる。戦争を忌避するのが<生存欲>だとするならば、戦争を始めるのも同じ<生存欲>である。それを否定することは、ウィットのようなSuicideをまねくだけである。
マリックは、辛苦に満ちた戦争に同じだけの癒しを対置した。これは否定と肯定なのだ。自然は、ときに残酷でときに慈悲深い。世界はあらゆる意味づけを拒絶する。意味づけをするまえに世界は存在し、そのような世界を人間があとから意味づけているに過ぎない。否定と肯定の両方を一つのものとして描く。世界は一つ。そうして戦争は人間という自然の一部という新たな視点を手に入れた。ファジーな無数の独白を羅列することであらゆる意味づけを拒絶し、矛盾に満ちたアイロニカルな世界を圧倒的な美的センスによって構築したマリックは、否定も肯定もせずに、ついにわれわれに戦争を<受容>させてしまった。これは画期的。
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