[コメント] 39 刑法第三十九条(1999/日)
映像や演出に日本映画らしいタッチを残しながら、端々が刃物のエッジ様に鋭く光る森田演出はさすが。一面、巧妙すぎる作り込みには「策士策に溺れる」の感も。アクの強い俳優陣の熱演怪演、そしてキャスティングそのものに拍手を。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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検事や弁護士のスタイル、というかリアリティの描写にはハッとさせられた。裁判所には、たしかにあのような「日常業務ノリ」で淡々と仕事をこなす彼等がいるのだが、スクリーンでそれを見せられたことはなかった気がするし、その分新鮮な印象を受けてしまうのだから、さすがの手練手管、といいうところだろうか。
ところが、ストーリーそのものがどうにも薄っぺらい。どんなに艶やかな色彩と陰影でメイクしたとしても、プロットやシークエンスそのものはノッペリとして平板。観客層として期待される「ミステリー好き」にかかってしまえば、かなり早い段階で展開は読まれてしまっただろう。その物足りなさを補おうとでもいうのか、明確な台詞や絵面としては出てこない「伏線や謎」といった類いのものの存在が目立つが、それにしてもやや鼻につく感がある。
結局のところこの映画で取られたそういう手法の拡大再生産が『模倣犯』になったのだろう。本作の良いところがすっかり抜け落ち、あざとい仕掛けと演出の突出だけが目につく“怪作”となってしまったのは、どうも森田監督その人の暴走に思えてしかたない。
本作にしろ『模倣犯』にしろ、素材(原作)は申し分ないはず。となると問題は、料理人が自己本意のさじ加減をしてしまったことにあったのだろう。
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