[コメント] 君を忘れない(1995/日)
戦争を若い世代に伝えていくには、市役所の匂いのする老人や革新系の気負った活動家がいくら声だかに語ろうが若者たちの耳には入ってはいかないだろう。そこで映像ドラマであり、なおかつ本作のように人気アイドルを使った手法はまったくもって正しい。そりゃ気分的にはなんかなぁ?とは思う。思うけれどもコレが現代ではもっとも直接的で効果が期待出来る手法なのだとしたら、今後もどんどん利用すべきだと割り切ろう。
髪型や台詞に違和感(っていうか怒り)があるのも我慢すべきだ。時代劇が現代の話言葉で制作されるようになっても誰も文句を言わないじゃないか。それと同じだ。
そう、この映画は既に「時代劇」を撮る感覚で撮られてしまったんじゃないのか?戦後60年も経っているんだ、それも致し方ないとしよう。我々は映画(というか表現の仕方)が時代とともに変革していくのを知っている。
ただ、ただひとつ忘れてはいけないこと。もはや戦国時代生まれの人間はひとりもいない。だが、戦争を同時代の運命として生き残ってきた方々はまだ沢山いらっしゃる。それは忘れてはいけない。
そんな方々は本作をどう見れば良いのだろう。ある程度の誤表現は許していただけるのか?ある程度のデタラメも許していただけるだろうか?出来ればそう願いたい。これはあくまでも若者向けの入門書的なドラマなのである。
そんなことはどうでも良いのかもしれない。私が恐れるのは「戦争を茶化してる」なんて本気で怒らないで欲しいのです。
本作のマーケティングは完全に若者に特化していた。年寄りが見るべき作品ではないから「何でもあり」なんて軽く考えて作った訳ではないだろう。だけども、そう見えてしまう底の浅さがある。せめて軽薄な音楽だけでも削除してくれたならと思う。
映画好きとしてとりわけ多くの和製戦争映画を見てきた。本作はどのプロットもどこかで見たようなものばかりであった。東映や東宝のかつてのプロットをアイドルに置き換えてささっと撮った感がある。オリジナルといえるモノは何一つ存在しない「軽い」映画である。強いていえばアノ軽薄な音楽だけが唯一のオリジナルだったのかも知れないと思うと情けなくて涙がでる。
私は戦争経験者の父には何としても絶対に見せたくない一品である。父をはじめ戦争体験者の方々が万一鑑賞されたのであれば、戦後世代として本当に申し訳なさで一杯です。
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