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[コメント] シーズ・レイン(1993/日)

大震災前の神戸の姿がここにあります
忠節橋

 夏の神戸を舞台に、男女6人の高校生が繰り広げる爽やかな青春ストーリー。いつの時代にも変わることのない青春の出会いと別れ、恋と友情をテーマに『小さな恋のメロディー』のメルヘンタッチ、『恋人たちの予感』の男女の友情を折り込んだ、オシャレで小粋な映画。青春の一時期にしか感じることの出来ない甘美な想いや苦悩を、透明感あるロマンチックな映像で表現しています。

 平中悠一さんが18歳の予備校生の時に書き上げたこの小説は、神戸を愛して止まない監督の手によって鮮やかな映画として切り取られ、映し出されました。青春期特有の“きらめきや戸惑い”を見事に紡ぎ出していることはもとより、神戸の情景がさりげなく、しかし、しっかりと表現されています。

 客観的な仕上がりについては、人によって方言などの処理に違和感を感じたりする部分もあるようですし、原作に思い入れの強い人にとっては受け入れ難い部分もあるかと思います。それでも、この小説に惚れ込んだ監督が映画にしているのですから、これは、この小説に対するひとつの受け止め方であり、ひとつの表現のあり方です。

 ところで、この映画は、地震がきっかけで映画の内容とは全く無関係に別の意味合いを持つことになってしまいました。震災前の神戸が沢山映し出されているからです。映画に映っていた神戸の様子は震災で変わってしまい、今では無くなってしまった建物も多くあります。映画の中で主人公ユーイチの家となっている日本家屋は、実際には監督の祖母の家で、地震のために半壊し、幼いユーイチとユウコが結婚式を挙げる教会や、ユーイチとレイコがデートする居留地も変貌してしまいました。

(評価:★4)

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