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[コメント] ハンナとその姉妹(1986/米)

コメディにせよシリアスにせよドロドロの人間関係って凄く苦手なんですが、不思議ですね。アレン監督が作ると素直に観られてしまいます。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 特に女性関係では色々と噂の絶えなかったアレン監督が描く姉妹を巡る恋愛関係。設定だけ見ると本当のドロドロの人間関係を描いた作品で、この手の作品が無茶苦茶苦手なのだが、不思議なことに、本作は結構楽しく観ることが出来た。

 これを考えてみると、これはアレン特有のシニカルさに裏打ちされているから。と言えよう。改めて考えるに、シニカルさというのは、単に物事を斜に見ると言う意味ではない。自分を含めあらゆるものを客観的に観察できるからこそ、全てをカラリと笑い飛ばすことが出来るのだ。その点チャップリンも上手かったが、アレンは更にその視点が洗練されてる。これは真似しようとしたって真似出来ない本物の才能だ(90年代の日本のトレンディドラマはこんな感じを目指していたのだと思うのだが、日本で作られたものはどうしてもウェットになってしまい、ドロドロの人間関係がドロドロのまま。だから大嫌いだった)。

 複雑な人間関係をさらっと描くが、それもマンハッタンの中流階級意識とか、ユダヤ人としてのアイデンティティとかに裏打ちされていて、行きすぎた感情と冷静な分析がうまい所折り合いが付いてるのも特徴か。様々な宗教にチャレンジしながら、人生の意味を見いだしたのが『我輩はカモである』だったというのも皮肉で良い。この辺りのバランスの良さは本当にアレンの上手さを感じさせてくれるよ。

 キャラクタの配置も見事。アレン自身もそうだが、プレイボーイとして有名なマイケル=ケインの私生活を覗いているような気分にさせられるのも楽しい所だ。一見さばさばけて見えながら、その実結構嫉妬深い役を演じてるファローも、今にしてみるとまるで本人みたいだ(元『ターザン』のジェーン役で一世を風靡したモーリン=オサリバンとその娘ミア=ファローの母娘共演も興味深い)。

 ただ、この後のアレンとファローの関係は、まるでこの映画を地でいくようなもので、実際アレンは『アニー・ホール』(1977)のキートンとつきあった後、この時点ではファローとつきあっていたのだが、その間にも数々の浮き名を流し、そしてなんとファローの連れ子と関係を持ってしまい…というもの。本当にドロドロだ。

(評価:★4)

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