[コメント] 私を抱いてそしてキスして(1992/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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南野陽子の前に三年前の元カレ太川陽介が現れてエイズを発病したと伝える。「君は大丈夫なのか」。このさっそくの主題突入の冒頭はいい。しかしいいのはここぐらいではないか。
前半描かれるのはバブリーな旅行代理店員と証券マンのセックスライフ。ソプラノサックスの音楽が90年代らしい。南野陽子の洋服もディスコの音楽も赤井の褌みたいなブリーフもバブリーだ。なぜ脚を挫いて助けられた赤井と即行でホテルなのかさっぱり判らないがこれもバブルなんだろう。
南野は親にも告げず、男にも告げずセックスして、色々弁明をするのだがよく判らない。ガス栓捻るのもエイズよりもバブルで空疎なのが原因のように見える。エイズを取材している記者の南果歩に相手が赤井と教えているが、そんなことしていいのだろうか。こんなに女は愚かでいいのだろうか。全てを許す赤井は理想的過ぎるだろう。
南果歩の取材は辛気臭いし柳沢慎吾はいつも通り辛気臭い。早朝の公園にひとりでいる南野を励ますゲートボールのお祖母さん岩崎加根子だけがとてもいい。「あたしにうつして治るんならうつしなさいよ」。
赤井は陰性。ふたりの赤ん坊に母子感染している確率は三割、どうだどうだの保健所、検査結果は陰性。南野と赤井喜ぶ「わたしたち勝ったのよ」(!)。これはひどい。陽性の場合を切り捨てて何の感動だろうか。冒頭、太川陽介の妻から私の子供もエイズなのよと電話で絡まれるが、彼等は負けたとでも云うのだろうか(その後彼等の描写がないのも片手落ちだ)。最後は南野が死んじゃって終わり。
赤井は証券会社勤めで最近はどこ行っても嫌われると愚痴っているのがバブル崩壊前後を記録している。田村高廣は友の会メンバーで序盤のエイズ説明要員。最後に行政っぽい渋谷当たりでのインタビュー集付き。厚生省とエイズ予防財団が本作を虚しく推薦している。
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