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[コメント] ビリー・ザ・キッド 21才の生涯(1973/米)

ペキンパー監督の力の入れ方が分かる作品ですが、ちょっと地味すぎかな?
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







“遅かった西部劇監督”ペキンパーが描いた、一種正統的な西部劇。監督本人にとっても、是非作りたかった素材ではないかと思われる。ただ作り方は自分のスタイルを決して崩すことなく、若さにませた暴走や恋愛劇よりも、疲れ切った追跡劇を延々繰り広げると言った内容で、更に『ワイルドバンチ』(1969)や『ゲッタウェイ』(1972)に見られた鮮烈な映像はなりを潜めてる。

 思うにこれは監督の思い入れが激しすぎたため、叙情性に溢れた内容になっていたという事実と、キッド役のクリストファーソンが今ひとつ薄味に見えてしまったため、その個性が見えなかったためだと思われる。だから本作は一連のペキンパー作品の中では地味目と思われがちである。

 だけど、改めて本作を考えてみると、これも又、一種の監督の美学に裏打ちされているようにも思えてくる。

 一種の西部劇のヒーローとして描かれるビリー・ザ・キッドを、ちょっとキレやすいだけの少年として描き、しかしそのカリスマ性に惹かれつつ、否定していく中年の保安官こそを主役にするというこの物語。西部劇の構造そのものを一旦解体し、感情を交えない暴力作品に仕上げる。確かにペキンパーらしさが良く出ていた作品でもあった。他の作品と較べたら、やや感傷的か?とも思ったけど、監督作品には実際こういった感傷的な作品も多いしね。

 それにしても本作はよく殺しまくった。本作には西部劇の常連が一気に出演しているのだが、ほとんど全員が血まみれになって死んでしまう。暴力作家と言われても仕方ないか?

 本作で楽曲を提供しているのはボブ=ディラン。歌の雰囲気は良いんだけど、感傷的な部分に来るとリフレインばかりがあまりにもわざとらしすぎたりして、そこがちょっと引っかかり。

(評価:★3)

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