[コメント] シャイニング(1980/英)
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スタンリー=キューブリックによるスティーヴン=キング世界の完全映画化…
と、言えれば良いんだけど、その実情は、キングの原作を下敷きにしたキューブリック独自の解釈による、いわば『キューブリック版・シャイニング』。
事実原作者のキングはこの作品を称し、「エンジンの積んでないスポーツカーだ」と酷評。後にキングの肝いりで『キング版・シャイニング』を作り上げるに至る(まあ、2時間程度であれだけの厚みを持つ作品を完全映画化出来る訳ないんだけど)。
原作を読み始めたら止まらなくなり、殆ど丸一日を費やして読み切り、その後悪夢にうなされた経験を持つ身としては、ストーリー的にはちょっと首を傾げる部分もあるにはあるが、この作品にはそれ以上のパワーがある。キューブリックは確かに期待に充分応えてくれていた。
閉鎖空間の中で徐々におかしくなっていくジャックを演じるニコルソン(そうか。この人もジャックか)のド迫力は白眉ものだが、ジャックの子ダニー役のダニー=ロイドも又上手い。彼にしか見えない友達トニーを、指と声色で演じ分けたあの演技は凄いものだ(その分母親役のデュヴァルの下手さが目立った気も…)。
エレベーターから溢れる血。「Who are you?」の双子の不気味さと、ラスト近くで一瞬挿入される二人の末路。ホテルのロビーで行われるダンスの華々しさと儚さ。全てが美しく、そして不気味。この動的な画面の美しさはキューブリックの巧さを際だたせている。
「REDRUM」の意味が分かる時の謎解きの方法も良いね(キング版だとあっけなさ過ぎ)。鏡とはこう言う時に使って欲しい。
それと、この作品の主役にニコルソンを抜擢したのは大成功。徐々におかしくなっていく課程と言い(私自身、仕事で忙しくなると、だんだん行動が彼に似てくる気がするのだが…「仕事ばかりで遊ばない。甘崎はいつか気が狂う」)、最後に完全にイッてしまったあのぞっとするほどの笑顔と言い、もう彼こそ、最高の演技者だ!
ここまで褒めちぎってきたけど、一つ本作品には減点してしまう部分がある。何故ラストを改変してしまった?原作は凄い派手な終わり方していて、こっちの方が映画向きって気がしたんだけど、それを回避してしまったのはちょっとマイナスっぽい。最後にホテルの写真にニコルソンを映すと言う事をやりたかったんだろうけど、そこがどうにも消化不良。折角苦労してホテルまでやってきたハローランがあっけなく殺されてしまうのも嫌な感じ。あれだけ派手に盛り上げておいて、あの終わり方だと、欲求不満になるよ。
★5にするか、★4にするか、最後まで迷ったけど、やはりマイナス部分を考えて…
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