[コメント] ああ爆弾(1964/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
「『ロバと王女』みたいなバカバカしいミュージカルが観たい」という気分になって、ずいぶん以前に録画したDVDを引っ張り出して再鑑賞。 久しぶりに観たら、バカバカしさよりも「なんだか凄い」感の方が強い。
「スラップスティック・和製ごった煮ミュージカル・コメディー」とでも表現しようか。 伊藤雄之助は邦楽で中谷一郎は洋楽が当てられてんだよね。それも結構多ジャンル。 しかも振付師はいなかったらしい。 全部、岡本喜八の絵コンテ通りに撮られたとか。
後にも先にも岡本喜八にしか撮れない世界なんだが、岡本喜八は「アクション・コメディー」と「ミュージカル」指向があって、その両方の、それも極端な部分が出た作品なんだと思う。(「西部劇」と「戦中派」というのも岡本喜八のキーワード)
それもこれも、B番組に降ろされたから、やりたいことをやりたいだけやったんでしょうよ。
この前作『江分利満氏の優雅な生活』が 「サラリーマンの悲哀物を撮れって言ったのに、誰が戦中派の悲哀を撮れって言った!変化球ばっかり投げやがって!」 と怒られて降格。 それで本作を撮ったら(次に『血と砂』があるんだが)、 「脚本がふざけすぎてるから少し他人の脚本で撮れ。カッチリした脚本にお前の変化球は合うかもしれない」 と言われて橋本忍脚本作が2本続く(『侍』『大菩薩峠』)。
んで、少し信頼を回復したのか自らの脚本で撮らせてもらった次作『殺人狂時代』が、やっぱり気に入られなくてオクラ入り。 それでケンカして「東宝らしい作品は何か?」と問われ、 「(現在企画中の)小林正樹の『日本のいちばん長い日』は絶対にやるべきだ」と主張したところ、 「小林正樹やらないからお前やれ」ってんでお鉢が回ってくる。 でもそれは「自分の戦争映画」じゃないから、東宝から離れてATGでの『肉弾』制作に至る。
岡本喜八全盛期の60年代、彼の作品はつながっているんだ。 今にして思えば、それは岡本喜八にとって恵まれたことだったのか、不幸だったのか・・・。
(10.05.22 DVDにて再鑑賞)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。