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[コメント] リング0・バースデイ(2000/日)

リング』シリーズを名乗る必要さえなかったら、脚本家と監督が、シリーズ物の制約ヌキでこのプロットを料理していたら、もっと力強いストーリーになっていたかも……なんてことはそもそもあり得ないわけで、余計に残念。
かける

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







このシリーズの前2作を、私は原作からの乖離という視点からも批判したけれど、今回ばかりはいさぎよく離陸したことこそ評価したい。この映画は、本当にどこかにたどりつくことができる可能性を持っていたと思う。

しかし貞子の呪縛は重い。製作側は懸命に謎ときを作り込もう、シリーズとして成立させようとするし、観客は貞子の恐怖や正体を期待する。結果、どこにも行けずに中途半端。独立した存在として作り込むことができていたら、ちゃんと着陸することもできただろうに、燃料切れで墜落してしまった。

しかし、もしそういった幸運があったとしても、もしかしたらダメかもしれない……と思わせるのが、劇団員による集団リンチの存在だ。

ミシシッピー・バーニング』などでアメリカ南部の黒人リンチの場面が出てくることがある。それとの決定的な違いは、観客が「加害者はワルモノだ」という認識を持てるかどうか、ということにある。

たしかに、主演女優や演出家、保護者である医師を殺したのは貞子の「念」かもしれない。だからといって彼女がリンチで殺される理由があったのか? そういう断罪が必要だと思う観客はそういないはずだ。だからといって、劇団員たちが絶対悪かというと、そうは言い切れないし、まさかそういう集団心理こそホラーなのだ、というオチでもないだろう。そういった中途半端なものを見せられたとき、映画的なカタルシスは一気に激減する。

最終的に、ホラーとしても、シリーズ最終作としても、何もかも中途半端。「船頭多くして“貞子”井戸に落ちる」。合掌。

(評価:★2)

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