[コメント] 宇宙大怪獣 ドゴラ(1964/日)
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怪獣ものを大得意とする本多猪四郎監督が監督した、不思議な雰囲気を持つ作品。一応本作も怪獣ものではあるけど、豪華な俳優陣を配した無国籍ギャング作品として観た方がぴったりする。全般的にコメディ調ではあるが、人間同士のアクションも結構きちんとまとめられ、怪獣が世界中をパニックに陥れてる下でのドラマが展開している。
ただ、本作は公開当時はあまり評判が良くなかったらしい。確かにおどろおどろしいスチールを見て、ハードな怪獣ものを期待して観に行ったつもりだったら、あまりに怪獣自体がとらえどころが無く、しかもあまり登場しないから消化不良を起こしてしまったかも知れない。後、こう言っては悪いが、ギャング団との攻防もコメディ要素が強すぎて今ひとつ緊迫感のないものになってしまったのも残念なところ。
だが、実はそれこそが本作の目的だったのではないだろうか?これはおそらく東映の“脱ゴジラ”の一環として作られたものと思われる。『ゴジラ』(1954)の呪縛は大きく、東宝特撮は怪獣を出すものという先入観にとらわれてしまっていた。しかもネタそのものはパターン化していき、更にどんどん子供向けに変わっていった。しかし円谷が考えていたのはそこで終わるものではなく、エンターテインメントとしてSF的要素を付け加えた大人向きのドラマを模索していたはず。それで変身人間シリーズを作り上げ、ハードな路線をこれまで続けてきたが、ここで一旦それをリセット。SFコメディを作ってみよう!という姿勢で作り上げたのが本作なのだろう。
ここでの主役は怪獣ではないと考えてみると、本作はかなり手堅くまとまっている。007を思わせる、アクションと笑いをふんだんに詰め込んだ作品だし、事実これは前年公開され大ヒットした『007 ロシアより愛をこめて』(1963)からかなりのインスパイアを受けていると思われる節があちこちに見受けられる。
それに本作の存在こそが後に円谷プロがウルトラQ作る上で重要な要素となっていたのは事実だし、SFXやCG技術が進んで、SF的要素が小物として使用出来るようになった現代になってようやくハリウッドもこの水準に達してきたと言うことも出来るだろう。
実に円谷は数十年後の作品をここで作ってしまったとも言えるのだ。 ここでもうちょっとアクション面をハードに作ることが出来れば傑作になり得たんだけどねえ。
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