[コメント] 暗黒街の対決(1960/日)
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岡本監督による和製フィルムノワール。悪を倒すには、それ以上の悪にならねばならない。というかなり暴力的な作風で、それに合わせて全体的にきつい色調で、相当下品かつ泥臭く作られているのが特徴。
実際下品は下品なのだが、そういった下品さや泥臭さと言ったものを逆に個性にしてしまっている。センスの悪さを重ねることによって、逆におもしろいセンスを発揮できる。これが岡本監督の強みだろう。
ところで、この下品さを自分のものに出来る監督というのは日本には何人かいるが、それぞれ個性の出し方が違っている。例を挙げれば、石井輝男とか日活時代の鈴木清順とかもやはり下品さを自分のカラーに仕上げる上手さを持っているが、岡本監督の場合は、センスが悪いままなのに、何故かスタイリッシュに見えてしまう錯覚を起こさせるのが特徴だろうか?
察するに、岡本監督の場合、要所要所に鮮烈なカットを挿入し、目を引く演出を程良く取っているからなんだろう。だから全般的にきつめな色調なのに、要所要所のカットが目を引き、印象が深くなる。
それに本作は役者をうまくまとめたことも重要。
本作のメインは一応三船敏郎演じる藤丘刑事が主体のサスペンスだが、推理とか地道な捜査よりも、とりあえず渦中に飛び込んで、でてきた奴を片っ端から裁いていく。現代版『用心棒』(1961)と言ったところだが、まさに三船のはまり役。この人しかできない役をきっちり演じている。
しかしながら、本作ではその三船まで食ってしまうキャラがいた。本作一番の見所はなんと言っても天本英世。天本は岡本作品の常連で、常になにかしら個性の強い役を演じさせているが、ここでの殺し屋役(しかも相当にドジな)はある意味最強。極彩色の光の中でのジャズ演奏シーンは不気味すぎて笑って良いやら怖がるべきなのかよく分からないが、あのシーンのインパクトだけで、この作品の何でも許せそうな気になってしまう。
なんだかんだ言って、本作の最大の見所は天本英世!天本ファンだったら是非押さえてほしい作品ではある。
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