[コメント] 豪勇ロイド(1922/米)
喜劇的設定に膨らみを与えて映画を画策するコメディジャンルの推進者としての功労ぶりが伺えるSO-SO作品
同時代のキートンが、なぜチャップリンではなくロイドに寄ったのかということがよく分かる「状況の喜劇」という構成の妙における知的な作業が誉れな先進的作品である。この時代、チャップリンはスランプ期にあり、しかしその後トーキーを迎えて全く違う次元で己の作家性を誇示して見せたのではあるが、ビッグ3のもうひとりであったキートンが、アクション+αの部分を喜劇のシチュエーションに求めて、当のロイドを意識したことがひじょうに意味深く読み取れるコメディの先駆的作品であった。いかんせんギャグの強度が前者二人に比べ弱いのは出自が異なるロイドの芸風であることとして、喜劇的性格を演じることにおいては前者二人を全く凌駕している事実は見逃せない。それもこのシチュエーションコメディであることによって立ち上る劇空間の密度の濃さなのであるが、ここに世紀のトライアングルが完成され、喜劇の黄金時代といわれる20年代の幸福な幕開けとなったことは映画史的において実に感動的な記憶である。バランスの良さはロイドの視野の広さを伺えるシネマツルギーであるが、この時点では以降の神業スタント芸に注目を呼ぶスタートライン。ともかく本作は映画界において驚異的な出現であったことだろう。
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