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[コメント] 海がきこえる(1993/日)

肝心なことは全てナレーションが語ってしまう。夜に浮かぶ城、ラストカットの表情、そうしたここぞというカットでの画力の無さが、画面をペラペラに見せてしまう。キャラデザインも類型的かつ弱々しい。
煽尼采

尤も、その非個性的で、ジブリ的デザインを弱々しくなぞっただけのキャラクターが、物語の日常卑近な世界や、青春特有の曖昧な感情とどこか合致しているようにも見えて、必ずしも致命的な欠点ではない。

ただ、ヒロインは、東京から地方に転校してきた気位の高い少女、と聞いて誰もが想像するようなお約束的なキャラクターから一歩たりとも出ないし、大学生になった彼女に観客もまた再会したいと思わせるような魅力はどこにもない。

脆弱な画力を補うように挿入される音楽もまた、ナレーション同様に画面に対して説明的に過ぎ、煩く感じることも多々。

青春期特有の、もやもやとした、淡々とした、それでいて押しとどめ難い感情を掬いあげた物語の繊細さに、アニメーションがついていけておらず、紋切り型の表現で処理。何か良い話を観たような気もするが、確かにそれを観たという実感がかなり希薄になってしまうのは、個々のカットの力のなさのせい。

そして、作品タイトルの意味が分からない。海は確かに出てくるが、単なる風景でしかない。

(評価:★2)

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