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[コメント] 地獄(1960/日)

「私が死んだら行きたいのは地獄だ。地獄に行けば歴代の教皇や国王と一緒になれるだろうが、天国には乞食と修道士と使徒しかいなのだから。」(マキャベリ)
荒馬大介

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 本作の登場人物のどうしようもなさがやたら印象に残る映画だが、自分はこの描き方をあまり非現実的だと思えない。現実世界をオーバーにすればこんなもんだろう、と。

 世間一般において“上手くやっていける人間”“天下をとる人間”というのは、主人公の清水(天知茂)のようなタイプではなく、養老施設なのにまるでマトモなことをしてない天上園の園長や、自らの苦悩を全て主人公に押し付け、ふてぶてしく振る舞う田村(沼田曜一)のような人達なのである。純粋で正しい心を持とうとする「良い人」ほど、欲深さやあくどさを目の当たりにして激しく苦悩してしまうのだ。

 だからこそ「地獄」という概念が出来たのだろう。苦悩するのは正しい心を持っている証、苦悩もせずにふてぶてしく「生きている」人間は「死んだら」地獄に行き、そこでずっと苦しむのです……という思想が成立するのも理解できる。もっともこの考え自体が、不幸な人達への慰めなのかもしれないが。

 ……それにしても魚で食中毒起こして全員死亡という展開は、どこか『モンティ・パイソン 人生狂騒曲』のサーモン・ムースで死んじゃったコントのようでもある。最近だとユッケの一件もあるからやっぱり食中毒は怖い、けど奮発して買ったフグを無許可で捌いて鍋にしたら全員死亡、でもよかったんじゃない?

(評価:★4)

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