[コメント] イグアナの夜(1964/米)
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焦燥に駆られた人物たちによる激論大会はテネシー・ウィリアムズ調なのだろう。珠玉の科白が飛び交う訳で、オリヴィエのシェークスピアもの同様、戯曲をじっくり読んで愉しむ種類の作品だが、その労を取ってみようと思わせるほどの魅力は感じられなかった。
デボラ・カーは魅力的で青い悪魔と闘ったという告白など面白く、「私は敬意を勝ち取った。悪魔は忍耐に敬意を払う」という科白など記憶に残るのだが、彼女の来歴を描いてほしかったという不足感拭い難い。他の登場人物も同様で、単線の時系列でしか描かない演劇調を不自由と感じてしまう。
美点はメキシコ風俗の描写で主題に沿ったものだがブニュエルより真っ当、西部劇とか『エル・トポ』みたいな偏ったものよりずっとためになる。マラカス振り続ける二人組の「ビーチボーイ」はホスト業みたいなものか。リチャード・バートンが聖公会出身、観光客はバプテストという対照は、判る人に尋ねてみたい細部。
ヒューストンらしい力感溢れるバストショットの切り返しメインで、キャメラを振り回すギミックも愉しいものだが、対話ばかりの構成になる終盤はその手の面白味は出しようがなかった。イグアナは神と見做されており、リチャード・バートンが岩場をビーチボーイに追われるショットは彼らがイグアナを追うショットと同じアングルで撮られ、イグアナを逃がした途端に詩人は覚醒に至るのだが、為にする単調な演出という印象が残る。グレイソン・ホールな教師はとても印象的。
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