[コメント] チャイナ・シンドローム(1979/米)
映画を見終った人むけのレビューです。
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米国にとっての'70年代は、泥沼化し出口の見えなくなったベトナム戦争問題や、一般市民に広がる麻薬汚染、噴出する黒人差別問題など、社会派映画にとってのテーマには欠くことがなかった。そういう時代背景にあって、現在よりも、よりあり得る驚異として核の恐怖が世界を包んでいた頃、内なる見えざる敵(本作では政治判断やマスコミ)による放射能汚染の危機を、よりリアルに見せることには成功している。
そういう、大衆に理解されやすい・受け入れられやすいアドバンテージがあるものの、演出に至ってはジャック・レモン扮する原発技術者が孤軍奮闘するという、言ってみれば主役の旨さ(一点凝縮)により映画全体が支えられてしまうと言う、それまでの「わかりやすい(安直な)」映画作りを踏襲した感じが否めない。
'80年代に入ると、「この役者を出せば作品としては、一定の質を保てる(結果として興行的に何とかなる)」手法は通用しなくなり、役者の質だけでなく、テーマ・監督・脚本・演出・映像技術のそれぞれが高い水準で融合しなければ、名作としては生き残れなくなる(一定の興行成果を期待できる成功要素の数が増える)。
その時代の転換期において、旧時代の手法が成立した最終時期を飾っているように思える(奇しくも、本作の公開に前後して、スリーマイル島での放射能漏れ事故が発生し、これを切っ掛けにして、米国は、国家レベルでのエネルギー政策として、原子力発電から撤退することになるのだが、こちらも時代の転換期を迎えていたわけだ)。
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